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かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

アレルギー性鼻炎

医師画像
あいの里耳鼻咽喉科
院長
森合 重誉
旭川医科大学医学部卒業。道内主要病院勤務、JA遠軽厚生病院耳鼻咽喉科主任部長を経て、2017年5月開院。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。補聴器相談医。めまい相談医。医学博士

前触れなく突然に起こる「くしゃみ・鼻水・鼻詰まり」はアレルギー性鼻炎の疑いも。専門医による診断が大切。適切な治療で症状の改善を

ダニ、ホコリ、カビによる通年性、花粉が原因の季節性、混合タイプも

 アレルギー性鼻炎は、花粉やホコリ、ダニ、動物の毛やふけなど、さまざまな原因物質(アレルゲン)に反応して体に起こる防御反応です。そして、アレルゲンを追い出そうとして「くしゃみ」が出たり、洗い流すために「鼻水」が出て、侵入を防ぐために粘膜が腫れて「鼻詰まり」が起こるのが基本症状となります。
 これらの症状は、急性上気道炎、いわゆる一般的な風邪でも現れますが、寒気や関節・筋肉の痛みなど、何らかの前触れ的な症状をともなうことが多いのに対して、アレルギー性鼻炎では前兆のようなものはなく、突然に起こるのが特徴とも言えます。
 診断は鼻粘膜擦過細胞診で好酸球が確認されること、血清検査でアレルゲン特異的な抗体が高値であることです。好酸球があればアレルギー反応が起きている証拠で、その原因検索が血清検査となります。しかし、血清検査で陰性のケースは、好酸球増多性鼻炎または局所的アレルギー性鼻炎と呼ばれます。細胞診も陰性の場合は、アレルギー反応とは異なる自律神経の反射、最近話題の寒暖差アレルギーのようなものに相当すると思います。アレルギー性鼻炎には、アレルゲンによって通年性と季節性に分けられ、通年性は主にダニ、ホコリ、カビなどが原因となります。季節性については全国的にスギ花粉が有名ですが、道内では道南以外でスギの自生が少なく、シラカバによる花粉症が最多となっています。

治療には薬物療法と体質改善や手術も。市販薬は用法・用量に要注意

 治療は、主にくしゃみ・鼻水に効果のある抗ヒスタミン薬の内服薬が第一選択で、鼻詰まりに効果のある抗ロイコトリエン薬を一緒に使うことも多いです。また、中等症以上の場合には、ステロイドの点鼻薬も併用するなど、前鼻鏡所見も勘案した上で組み合わせて使うのが一般的な治療法と言えます。このほかにもクリニックではあまり使用されていませんが、ヒスタミンによるアレルギー反応よりも、もっと上流で起こるIgE免疫細胞の作用をブロックすることで病気の発症を止める抗IgE抗体薬による治療法もありますが、高価なこともありまだ普及していません。なお、漢方薬(小青竜湯)にも効果が認められているものもあり、それぞれに合った方法を組み合わせることで、より良い効果が期待できます。
 また、花粉症については花粉予報を参考に、花粉が飛び始める1週間くらい前から薬を飲み始めておくと、花粉の大量飛散期でも症状が軽く済みます。時季が近くなったら無症状でも薬を準備しておく、いわゆる初期療法をお勧めします。
 最近では、体質改善を図る舌下免疫療法がアレルギー性鼻炎の治療として確立しています。最低3年間継続する必要はあるのですが、鼻炎症状にともなう頭痛や不眠から解放され、投薬治療もしなくて済むメリットは大きいと言えます。小児でも適応があり、受験前に治療を済ませておきたいと希望される方も多いです。
 このほかにも根治治療として手術があります。一つはアレルギー反応が起きる場所(甲介)の粘膜をレーザーで焼く方法ですが、再燃する場合、下甲介粘膜をトリミングしたり、粘膜下下鼻甲介骨切除術や原因となる神経自体を切断する手術もあります。
 最後に、患者さんの中には市販の点鼻薬を使われている方もいますが、一時的に血管を収縮させて鼻の腫れを取るというタイプの薬が多く、即効性は高いのですが時間がたつと元に戻ってしまうため繰り返し使用するようになり、使用する間隔が短くなっていくうちに効かなくなってしまいます。さらに、防腐剤が含まれていると、それが悪さをして薬剤性鼻炎になることもあるため、1カ月に10日までを基準に、効果がない場合には使用をやめて、早めに耳鼻科を受診することをお勧めします。

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