かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状
シミ・シワ・たるみ

- グレイス皮膚科クリニック
理事長・院長
安居 千賀子氏 - 1978年北海道大学医学部医学科卒業、北大小児科で研修後皮膚科入局。北大付属病院、市立札幌病院ほかを経て開業。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本美容皮膚科学会・日本抗加齢学会各会員。医学博士
皮膚科での相談が多い3つの悩み。原因を理解することで完全に解消できないまでも、予防と悪化を抑えられる可能性も。気になる悩みは一度専門医に相談を
シミの原因は、紫外線、ストレス、加齢、過労や睡眠不足、血行不良も
シミとは、メラニンという色素が皮膚に沈着したものです。メラニンは表皮の最下層にあるメラノサイトという細胞から作られ、周りの表皮細胞に送り込まれて広がっていきます。表皮細胞は、新陳代謝(ターンオーバー)が比較的早く、基底層で新しくできた細胞は約4週間で最上層の角層まで上がりますが、その際にメラニンも共に最上層に押し上げられ、その2週間後には一番外側から垢(あか)となって剥がれ落ちてなくなります。しかし、メラニンの過剰産生や、新陳代謝が停滞することで、メラニンが皮膚に沈着して残ってしまいシミとなるわけです。
メラニンの過剰産生が起こる原因の一番は紫外線です。紫外線は肌の細胞に活性酸素を大量に発生させ、その活性酸素が表皮のメラノサイトに影響を与え、メラニンの産生を高めることになるのです。また、ストレスも大きな原因の一つで、体内でストレスホルモンが産生されると、メラニンの生成を促進させるといわれています。一方、新陳代謝が停滞する原因は加齢もありますが、過労や睡眠不足、ストレス、運動不足、冷え症などで起こる血行不良なども関係すると考えられています。これらのことから、シミを予防するために重要なことは、第一に一年中の紫外線対策です。次にストレス管理で、できるだけストレスをためないような生活を心掛けるということです。また、睡眠不足は成長ホルモンの分泌が減少し皮膚の再生が妨げられるため、十分な睡眠も大切です。このほかにも、体内で作られる抗酸化物質の量は年齢と共に減少するため、抗酸化作用のある成分を含んだ食品やサプリメントを利用することも有効です。主な成分としてはアスタキサンチン(サケ、エビ、カニなど)が有名ですが、ビタミンC(ブロッコリー、イチゴ、キウイ)やビタミンE(ナッツ類)、リコピン(トマト)も日々の生活で積極的に摂取すると良いでしょう。
紫外線とストレスはシワの原因にも。
たるみの原因には頭蓋骨の萎縮も
シワは、皮膚の表面にできた溝や折り目のようなものです。皮膚のハリを保つのは、表皮の下の真皮の中にあるコラーゲン線維や弾性線維で、これらが少なくなったり、壊れてしまうとシワができるのです。この原因も第一は紫外線です。紫外線はコラーゲン線維や弾性線維を壊すだけでなく、線維を作る線維芽細胞まで壊してしまいます。もう一つは加齢です。そのほか慢性的な炎症やストレスも線維芽細胞の活性を低下させます。その意味では、シワの予防も第一は紫外線対策です。また、コラーゲン線維などの原料となるアミノ酸(タンパク質)を十分に摂取することと、その生成過程で必要となるビタミンCの摂取も欠かせません。さまざまな炎症は早く適切な方法で治すことや、ストレス管理も大切です。
顔のたるみは、皮膚や筋肉の弾力が失われ、重力に逆らえずに皮膚が下がってしまう状態です。皮膚は加齢で緩むだけでなく、それを支えている深層にある皮下脂肪組織や筋組織の変化と、老化にともなう骨(頭蓋骨)の萎縮も関係しているのです。
顔の筋肉(表情筋)は分類的に骨格筋の一つで、一端は骨についていますが、もう一端は皮膚や粘膜についているため、筋肉が衰えて収縮力が弱まると、付着している部分の皮膚がたるんでくるわけです。さらに頭蓋骨が委縮すると骨についている顔の筋肉を支えるじん帯も緩み、顔の皮膚もたるんでしまうわけです。しかし、骨格筋は何歳になっても鍛えることができますので、たるみの予防にはよく笑い話すことで表情筋を動かし鍛えることをお勧めします。
また、できてしまったシミ、シワ、たるみは、皮膚科でのさまざまな方法で治療を行っていますので、十分に施術医師と相談し納得できる方法を選んでいただければと思います。