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かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

胆石症

医師画像
新札幌豊和会病院
院長
笠井 章次
2004年札幌医科大学卒業。日本外科学会専門医。日本大腸肛門病学会専門医。日本消化管学会専門医

肥満や妊娠、糖尿病、急激なダイエット、脂質異常症などが関与。無症状のことも多いが、右肋骨の下、背中や肩、みぞおち、腰などの気になる痛みは一度かかりつけ医に相談を

日本人の約10%、中年以降に多く、近年増えている胆石症

 肝臓では、脂肪やタンパク質などの消化を促す胆汁という消化液が作られています。胆汁は肝臓から排出されて胆管という管を通り、胆のうにいったん蓄えられて濃縮されます。食事を取ると胆のうは収縮して、胆汁を十二指腸に送り出し、食事と混ざることで脂質やビタミンの吸収を助けます。この胆汁の成分が、胆汁の通り道(肝臓、胆のう、胆管)で何らかの原因で固まってしまったものが「胆石」です。場所によって、肝内結石、胆のう結石、胆管結石と呼びます。一般的には「胆石症」というと「胆のう結石症」を指します。人体では他にも腎臓にできる腎結石、すい臓にできる膵石(すいせき)、尿管にできる尿管結石などがありますが、これらはそれぞれできる仕組みが異なる、全く違う病気です。
 近年、胆石症の患者さんは増えており、日本人の10%ほどが胆石を持っているといわれています。胆石は中年以降に多く、以前は女性に多い病気でしたが、近年はあまり男女差がなくなってきているようです。胆石の形成には、肥満や妊娠、糖尿病、急激なダイエット、脂質異常症などが関与しているといわれています。
 胆のう結石があるからといって必ずしも症状があるわけではありません。胆のう結石を持っている人の20%ほどが無症状といわれています。胆のう結石の最も多い症状は右季肋部痛です。右肋骨の下あたりに差し込むような痛みを感じ、時に背中や肩に抜けるような痛みをともなうこともあります。胆石の痛みは決まったところだけが痛むのではなく、人によっては心窩部(みぞおち)や右肩、腰など痛みを感じる部位はさまざまです。痛みの種類も、鋭い痛みや鈍い痛み、肩こりのような張った感じなどいろいろです。痛みのほかに、発熱やおう吐が起こることもあります。

現在の治療の基本は腹腔鏡下手術。
症状によっては開腹手術の場合も

 胆石が疑われた場合は、次のような検査が行われます。腹部超音波検査は胆石に対する最も一般的な方法で、胆石症のほぼ100%、胆管結石でも約90%は見つかるといわれています。ゼリーをつけた器具をおなかに当てるだけなので、苦痛もほとんどありません。血液検査を行えば、炎症や黄疸の有無が分かります。腹部造影CT検査は、胆のうの大きさや胆管の太さ、炎症の状況や周りの血管構造などを詳しく調べる際に用いられます。そのほかMRIも使用される場合があります。
 治療は、症状が全くない場合には経過を見ていただいて構いません。痛みを繰り返す場合や胆のう炎を起こした場合、胆管結石と診断された場合などは治療が必要です。
 胆のう結石に対する治療の基本は手術(胆のう摘出術)です。現在はほとんどが腹腔鏡下手術で行われています。数カ所の小さな傷からカメラや手術器械を差し入れて行う方法です。この方法は従来の開腹手術に比べて、術後の痛みが軽度で、食事が取れるようになるまでの時間が早いというメリットがあります。入院期間は4~6日程度です。
 炎症がひどい場合や、腹膜炎を起こしている場合、過去に開腹手術を受けている方で癒着がある場合などは開腹手術で行うことがあります。この場合、入院期間は1週間程度のことが多いです。胆管結石に対しては、内視鏡的総胆管結石採石術などを行います。これは口から内視鏡を十二指腸まで挿入し、結石を取り出す方法です。
 最後に、胆石の発生を完全に予防する方法はありません。しかし、リスクを少しでも下げる手立てとしては、脂質の多い食事を避ける、アルコールの摂取を控える、脱水にならないように水分摂取を行うことなどが挙げられます。肥満や過食を避け規則正しい生活、食事を心掛けましょう。

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