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骨粗しょう症

医師画像
新札幌整形外科病院
医師
後藤 佳子
2002年藤田医科大学卒業。15年北海道大学大学院医学研究科修了。その後、新札幌整形外科病院や北海道大学病院スポーツ医学診療センターで勤務。20年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本骨粗鬆症学会認定医ほか。医学博士

骨折リスクを増大させ、寝たきりや要介護状態の原因となる骨粗しょう症。約20歳までの最大骨量獲得と、40歳からは定期的な骨密度検査が重要

女性の健康寿命の延伸のためにも
骨粗しょう症の予防と早期対策を

 骨粗しょう症は、骨の強度が低下して、骨折のリスクが増大しやすくなる疾患と定義されていて、日本の40歳以上の骨粗しょう症患者さんの数は男性約300万人、女性約980万人、計約1280万人といわれ(2005年設立・大規模住民コホートスタディROAD結果)、4人に3人は女性という、女性に多い病気であると言えます。09年のデータですが、80歳以上の女性の骨粗しょう症有病率は世界で37・7%(WHO調べ)、日本では腰椎43・8%・大腿骨頸部65・6%という報告もあります。中でも大腿骨頸部の骨折は、寝たきりや要介護状態になる確率が高くなることが大きな問題となっています。「高齢者の転倒防止」(林泰史著・日本老年医学会雑誌・2007年)によると、骨折が原因で要介護3となった場合に必要となる5年間の費用は1540万円にも上ると報告があり、国では40~70歳の女性を対象に、5年ごとに骨粗しょう症検診を受けることを推奨しています。また近年は、女性の平均寿命が延び、健康寿命の延伸のためにも骨の健康が重要視されてきています。
 骨粗しょう症で重要となる骨強度を規定するのは、約7割が骨密度、残りの約3割は骨質になります。正常な骨は、骨を壊す骨吸収と、骨を作る骨形成という新陳代謝によって常に作り替えられています。骨の新陳代謝は女性ホルモン(エストロゲン)と深く関わっていて、女性の場合には周閉経期・更年期からの女性ホルモンの減少により、骨の新陳代謝のバランスが崩れ、急激に骨密度が低下し、骨粗しょう症になってしまいます。その意味でも、骨粗しょう症検診を受け、早くから自分の骨の強度や骨量を知ることで、骨粗しょう症の予防に取り組むことが大切と言えます。骨粗しょう症と診断された場合には、運動指導や食事内容などの栄養指導を基本として、必要に応じて骨吸収を抑える薬や骨形成を良くする薬による薬物治療も可能です。いずれにしても、早期発見と早期対策が重要となるわけです。
 さらに、1回骨折を経験した方は2次性骨折を起こしやすいといわれています。特に大腿骨頸部骨折の場合、2次性骨折を起こす確率は約4年以内と非常に高いため、2次性骨折を防ぐためにも定期的な検査や、適切な治療と予防のための指導を受けることをお勧めします。

3カ月以上の無月経、標準体重の85%以下は骨粗しょう症リスクに

 女性の場合、最大の骨量を獲得・ストックできるのは20歳までで、その時点で骨量が低い方は骨折リスクが高くなるといわれています。中でも激しいトレーニングを続けている女性アスリートは、運動量に見合わないエネルギー摂取によって必要エネルギーが不足がちで、そのため長い間生理が止まってしまう無月経となり、その結果、骨粗しょう症による疲労骨折を起こしやすくしていることが分かっています。これら「利用可能なエネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」は「女性アスリートの三主徴」と言い、大きな問題となっているのです。“生理がなくてラッキー”“痩せている方が動きやすい”と言う方もいますが、けがのリスクを減らして力を十分に発揮するためにも、十分なエネルギー摂取と、正常な月経周期を保つことが大切なのです。特に20歳までの時期は、適正体重を守り、最大の骨量を獲得することで、将来の骨粗しょう症予防にもつなげてほしいと思います。
 女性アスリートが抱えている問題に関しては当病院でも女性アスリート・スポーツ外来を設けているほか、スポーツ強化選手を支援してきた、心理士、薬剤師、栄養士、理学療法士、婦人科医、整形外科医による「北海道女性アスリート医科学支援ネットワーク」でも相談窓口を設けていますので、お悩みの事がある方は一度相談してみると良いでしょう。

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