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慢性腎臓病(CKD)

医師画像
はらだ腎泌尿器クリニック
院長
原田 浩
1987年北海道大学医学部卒業。同大学泌尿器科学教室入局。市立札幌病院腎臓移植外科部長を経て、2019年8月より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医ほか。医学博士

末期に至ると透析治療か腎移植が最終選択肢に。悪化する前の早期からの治療介入で進行の抑制を。生活習慣病の改善も重要

長い年月をかけて悪化する腎臓
積極的な検査受診が重要

 腎臓は、背中側の腰のやや上部に左右一つずつあり、腎臓一つの中には糸球体や尿細管からなる約100万個のネフロンと呼ばれる血液のろ過装置があります。いわゆる「おしっこの工場」です。ネフロンの数は生まれたときから増えることはなく、むしろ加齢や何らかの障害によって減っていきます。一度失われた機能は再び回復することはなく、おしっこを作る働き(腎機能)は徐々に悪くなっていき、慢性腎臓病(CKD)と診断されます。
 腎臓の働きが悪くなるスピードは、例えば高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満も含めた生活習慣病をはじめ、腎臓そのものの病気のほか、さまざまな病気が原因となって早まります。そして長い年月をかけて、いずれは末期腎不全という病態に至ってしまいます。しかし現在は、早期の治療で、腎臓の機能の低下を抑制したり、遅らせることが可能になっています。その意味では、現在の自分の腎臓の働き具合を正しく理解し、腎臓の働きの悪化を早める原因である高血圧や脂質異常症の方は数値を適正に管理するなど、必要に応じた適切な治療を行うことが大切です。
 当院では、尿検査(タンパク質)や血液検査(クレアチニン)、CKDの診断基準である糸球体ろ過量(GFR)から、患者さんの現在の腎臓の働きを正しく評価して、その悪化を少しでも遅らせるという観点から診断と治療を行っています。また、末期腎不全まで進行し、腎臓の機能の回復が見込めない場合には、腎代替療法として血液透析や腹膜透析、腎移植という治療法の選択肢もあり、患者さん自身のQOL(生活の質)に応じた治療を提案しています。腎移植に関して言えば、日本では脳死後または心停止後の方から提供される献腎移植は少なく、10年以上も待っている方もおりますが、生体腎移植に関しては世界の中でも数多く行われ、治療成績も高く評価されています。しかし、腎代替療法への移行については、適正な時期を逃したり、遅くなり過ぎたりすることで、尿毒症を発症するなど、命に関わる状態に陥ることもあるため、治療の初期段階からきちんと計画を立てて治療法を選択していく必要があります。
 しかしながら、一般診療では意外とCKDに関する評価の許容範囲が広く、現在の腎臓の機能について指摘されないまま、悪化するまで放置されるケースも少なくありません。しかも、腎臓の機能は血液検査で正常値であっても実は機能が低下している場合もあり、腎臓の専門医でなければ見落とされてしまい、まれに末期腎不全になるまで気付かれないケースがいまだにあると聞きます。
 例えば、健康診断の血液検査結果でクレアチニンが正常値を超えている、あるいはギリギリの数値の場合は、一度、腎臓内科や腎臓専門医の診断を受けてみると良いでしょう。このほかにも、尿のトラブルやむくみが気になるという方も同様です。

年のせいだからと思わず専門医に相談を

 腎臓の病気は加齢にともない発症しやすくなることから、高齢社会の現在では、まだまだ患者さんは増えるものと思われます。腎臓の働きがそれほど悪い状態でなければ、食事や運動療法、内服薬で進行を抑えることが期待できます。さらに、透析や腎移植までの時間を遅らせることができれば、末期腎不全に至らずに一生を終えることも可能です。いずれにしても、CKDの治療には早期からの介入が重要となりますので、単なるおしっこのトラブルであっても、「年のせいだから仕方がない」と放置せず、一度は専門医への相談をお勧めします。あわせて、腎臓の働きを悪化させる生活習慣病の管理や、肥満予防のための体重コントロールなど、若い方でも日常の中でCKDを予防し、慢性腎不全にならない生活を意識してほしいと思います。

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