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かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

医師画像
末広呼吸器・内科クリニック
院長
武田 昭範
旭川医科大学卒業。同大学院修了。旭川医療センターCOPDセンター長、松本呼吸器・内科クリニック副院長・院長を歴任。2024年社会医療法人北斗末広呼吸器・内科クリニックに名称を変更

COPDは喫煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、生活習慣病の一つ。早期発見にて肺の機能を維持することが大切

たばこを吸う人は多いのに
まだまだ認知度が低い肺の病気

 COPDという病気をご存知でしょうか。Chronic(慢性的な)Obstructive(閉塞的な)Pulmonary Disease(肺の病気)の略で、長年たばこを吸っている方に多い肺の生活習慣病です。
 厚生労働省が国民の健康を推進するための基本的な方針「健康日本21(第三次)」では引き続き認知度向上に加え、COPDの発症予防・早期発見・治療介入、重症化予防など総合的に対策を講じていくことが必要とされ、2021年度の統計で人口10万人あたり13・3人のCOPDの死亡率を32年には10%まで減少させる、という新たな目標が掲げられました。国内のCOPD患者数は500万人以上と推定されており、その死亡率は年々上昇しています。日本男性ではCOPDが死亡原因の第9位となっています。しかしながらその多くは適切な治療を受けていないのが現状です。COPDを正しく理解し、早期診断・早期治療することが求められています。
 現在では優れた薬が開発され、治療に効果的ですので、喫煙歴の長い方には一度受診をお勧めします。

COPDかもしれない症状は?
その対策と治療法は?

 COPDになると、気管支から枝分かれしている細気管支(気道)や、末梢の肺胞に炎症が起こり、空気の出し入れがしづらく、呼吸しにくい状態になります。また、肺胞や血管が壊れてしまい、血管が酸素を取り込みにくくなります。
 COPDの発見が遅れがちであるのは、初期にはごくありふれた症状しかみられないため、見過ごしてしまうことが多いからです。初期の場合、普段の生活ではほとんど自覚症状がありませんが、階段の上り下りや雪かきなど、ちょっとした身の回りの労作時に息切れが続くようであれば、注意が必要です。また、夜中に咳き込んで眠れない、風邪でもないのに咳や痰が続く、風邪を引きやすいなどということを感じるケースもよくみられます。特に喫煙歴が長く、50歳以上であるならばCOPDを疑う必要があるでしょう。
 COPDの患者さんの中にはぜんそくを併発しているケースも少なくありません。同じ肺の病気である肺がんや気胸などの肺合併症もみられます。そのほか、全身性炎症や脂肪量などが減少する栄養障害、筋量・筋力が低下する骨格筋機能障害、心筋梗塞・狭心症・脳血管障害などの心・血管疾患、骨粗しょう症、抑うつ、高血圧、糖尿病、睡眠障害、貧血など、一見すると関わりがないように思われる併存症も多くみられます。このように、COPDは他の多くの病気の発症リスクを高める可能性もあり、併存症を含めた病状の評価や治療が必要になります。
 COPDを発見するためには、スパイロメトリーと言われる呼吸機能検査をして気管支が狭くなっているために生ずる閉塞性換気障害の有無を調べます。簡単に行える検査で重症度の判定もでき、必要に応じてCTなどの検査も行いながら治療方針を決めます。治療としては、まずこれ以上気道に炎症によるダメージを与えないよう、禁煙することが基本です。そのうえで、気管支拡張薬(吸入薬)、去痰薬などを処方します。複数の気管支拡張薬や吸入ステロイド薬を併せて導入することで症状をコントロールするケースもあります。こうした薬は近年さまざまな種類の開発が進んでおり、症状に応じた処方が可能となっています。
 COPDは決して珍しい病気ではなく、非常に多い病気だということを理解していただければと思います。早期に病気を発見し、肺に生じている炎症を緩和して肺の機能を維持することが大切です。好きなことを楽しめる暮らしを守るために、気になることがありましたら呼吸器科の受診をお勧めします。

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