かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状
白内障

- 苫小牧しみず眼科
院長
清水 恒輔氏 - 2007年旭川医科大学卒業。同大学病院、王子総合病院、北海道がんセンター、札幌市内眼科クリニック院長を経て、23年5月開院。日本眼科学会専門医
「見えづらい」だけではなく、まぶしさや眼鏡の度数の変化も症状の一つ。医療機器の発達により侵襲が少なく安全で、短時間で終わる手術が可能
発症の原因の大半は加齢。
見え方に変化があれば白内障の場合も
白内障とは眼の中にある茶色目の後ろにあり、ピントを合わせる機能がある「水晶体」が濁る疾患です。原因は大半が加齢によるもので60歳代では約7割、70歳代では9割、80歳を超えるとすべての方が白内障を有しているといわれており、残念ながら予防法も医学的に確立されているものはありません。
そのほかの原因は糖尿病、ステロイド剤の内服や点眼、アトピー性皮膚炎、外傷などがあります。眼の中が濁るので「見えづらい」といった症状が主なものですが、急激に進むものではないため「夜間の運転で対向車のヘッドライドがまぶしくなった」、「眼鏡が合わなくなって眼鏡店に行ったら眼科受診を勧められた」、「運転免許更新ができなかった」などという理由で、眼科を受診し白内障が判明することも多数あります。
一度水晶体が濁ると白内障の治療は薬剤では改善することはなく、手術をするしかありません。しかし、手術となると不安に思われる方々も多いと思われますが、現代の医療機器の発達により、痛みなどはほぼなく短時間で終わる手術です。水晶体の周りは水晶体嚢(のう)と言われる透明な袋があり、その中身だけが濁ります。そのため水晶体嚢の前面に穴をあけて、そこから白内障専用の装置で濁りを破砕しながらすべて吸い取ってしまいます。
しかし、中身を吸い取ってしまうとピントを合わせる機能が失われてしまうため、残った水晶体の中に透明な人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入することでピントを補います。かつては6~7mmを切開して直接濁りを摘出し、傷口を糸で縫合する手術でしたが、現在では2mm程度の小さい切開から行うため縫合することもありません。合併症が全くないわけではありませんが非常に侵襲の低い治療です。現在日本では年間140万件の白内障手術が行われており、そのうちの45%は日帰り手術といわれております。
眼内レンズにも種類があり、術後の見え方は、主治医と相談を
眼内レンズも進化を遂げております。最も多く使用されているものは「単焦点眼内レンズ」というものです。文字通り焦点が一つにしか合わないため、ある1点はくっきり見えますが、すべての距離をはっきり見るためには眼鏡が必要となります。従来から眼鏡に慣れている方にはこちらのレンズが解像度も高く眼鏡で調整もきくのでお勧めです。この単焦点レンズの中には乱視を矯正する「トーリック眼内レンズ」というものもあり乱視を軽減することも可能です。
また、眼鏡をなるべく使用したくないという方には「多焦点眼内レンズ」というものもあり、こちらも文字通り遠方も近くもどちらにもピントが合うレンズがあります。眼鏡をする機会が減少し生活が楽になります。欠点としては、「選定医療」という部類となり眼内レンズ代が別途必要になること、光を分散させて焦点を増やすため、見え方の質がやや劣る可能性があり馴染まない方もいらっしゃいます。ライフスタイルは千差万別ですので、術後の見え方に関して主治医と相談してみてはいかがでしょうか。
最後に、手術を受けるタイミングはご自身が見えづらいと思った時です。視力が良くても自覚症状が強い場合は早期の手術をお勧めします。逆に視力が悪くても運転もせず生活に不自由のない方は手術の必要はないと言えます。しかし、白内障は進行すればするほど手術の合併症のリスクが高くなると言えます。白内障の診断を受けた場合は、医師から手術の必要性があるかどうか、術後の見え方をどのようにしたいか、医師と相談することが重要です。先に挙げた点に留意され、十分吟味し、ご納得の上で選択されることをお勧めします。