かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状
魚の食中毒

- 木古内町国民健康保険病院
外科医長
井上 大成氏 - 1998年札幌医科大学卒業。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医。検診マンモグラフィー読影認定医
家庭で魚をさばく際は要注意。きちんと食中毒と
寄生虫対策をしておいしくいただくことが大切
ヒスタミンや腸炎ビブリオ食中毒の対策を
魚をさばくときは鮮度管理に注意
インターネット動画の影響により自分で魚をさばく方が増えているのだそうです。お店で買える鮮魚のみならず、未利用魚をお取り寄せするのも人気があるのだとか。日本人は魚をお刺身で食べますから、刃物によるけがだけでなく、衛生面も気をつけなくてはなりません。自宅で魚をさばいて食べるときの食中毒について注意事項をまとめてみました。
絶対条件は新鮮な魚を手に入れることです。味の面では魚の締め方が重要になる一方、鮮度の面では温度管理およびさばくまでの時間が勝負となります。魚に含まれるアミノ酸であるヒスチジンがヒスタミンに変化すると、アレルギー様の食中毒を起こします。ヒスチジンを多く含む、カツオやマグロ、アジ、サバなどを常温で放置したり、ヒスタミン産生菌が多く棲みついているエラや消化管を除去せずにいると、ヒスタミンが多く作られます。ヒスタミンは熱に強く、通常の加熱調理では容易に除去できないので、一度生成されると重篤な食中毒を引き起こします。魚を食べてからおおよそ1時間以内に、顔面の紅潮、じんましん、吐き気、頭痛、下痢などのアレルギー症状が起きると、ヒスタミン中毒の可能性が高いです。重症な場合は呼吸困難や意識消失を起こす場合がありますので、ただちに医療機関を受診して治療を受けましょう。
魚介類には腸炎ビブリオという食中毒の原因菌が付着していることがあります。魚を食べてから数時間後に激しい腹痛や水下痢が起こった場合は腸炎ビブリオ感染症を疑います。ほとんどの場合は3日程度で自然に治りますが、症状が重い場合は入院して脱水治療の点滴や、抗生剤治療を必要とします。腸炎ビブリオは塩水に強く、真水に弱い特徴があります。魚を三枚に下ろす前、内臓を取って血合を除去したら冷たい水道水でよく洗うようにしましょう。
魚を生食するときには
アニサキスに注意を
アニサキスはイカやサンマ、サケなど私たちがよく食べる魚の内臓にも寄生しています。アニサキスは長さ2cm、太さ1mmほどの白い線虫で、道南ではスルメイカが有名でしょう。当たり外れはあるものの、ほとんどの海水魚に寄生しているので注意が必要です。放置すると身に移動する数が増えますので、こちらも内臓はできるだけ素早く除去した方がよいでしょう。
アニサキスによる食中毒は、タンパク成分が原因のアニサキスアレルギーと摂取したアニサキスが胃壁に直接刺さる胃アニサキス症の2つがあります。アニサキスを何度か摂取している間に、じんましんや血圧低下などの重篤なアレルギー症状を引き起こすようになるのがアニサキスアレルギーです。一般的な魚アレルギーと混同されている場合があるので、心配な方は病院で血液検査を受けるようにしましょう。
胃アニサキス症は中心温度60℃で1分以上加熱するか、冷凍庫で48時間冷凍することによりアニサキスが死滅するので予防可能です。ちまたでは冷蔵庫で数日低温保存する熟成がブームです。冷蔵庫の温度ではアニサキスは死滅しません。少なくともエラと内臓は抜いてアニサキスが見えやすくなる特殊なライトも使ってアニサキスを徹底除去し、当たる確率を下げるようにしてください。
胃アニサキス症は、猛烈な胃の痛みや吐き気、おう吐が特徴です。胃壁に刺さったアニサキスを内視鏡(胃カメラ)で見ながら除去すると、症状は間も無く消失します。正露丸の服用で症状が緩和されるという研究結果がありますが、アニサキス症の薬剤としては薬機法では認められていないですし、アニサキス自体を物理的に除去する方が確実な治療ができるといえます。魚を生食した後におなかに激しい痛みが起こった場合は早めの病院受診をお勧めします。