ぶらんとマガジン社
ホームドクター

北海道、札幌市、旭川市、滝川市、苫小牧市、岩見沢市、函館市の病院情報
あなたの街のお医者さん検索、病院検索ガイド

かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

在宅医療

医師画像
勤医協苫小牧病院
院長
松本 巧
2000年北海道大学卒業。日本内科学会総合内科専門医。日本リウマチ学会専門医・指導医。日本内科学会認定教育施設指導医

病気や心身の障害のために通院が困難な患者に対して、自宅や施設に定期的に訪問して行う医療。「最期まで自宅や施設で過ごしたい」という患者や家族の思いをサポート

自宅や施設に定期的に訪問。病院同等の治療や管理、検査が受けられる

 医療を必要としているのに、その病気や心身の障害のために通院が難しい患者さんがいます。そのような患者さんが暮らしている場所に医療者が訪問し、医療や看護、訪問リハビリテーションなど、さまざまな医療サービスを提供するのが在宅医療です。代表的なものが訪問診療です。多くの皆さんのイメージでは「往診」という言葉が近いと思いますが、往診と訪問診療は似ていますが大きな違いがあります。往診は患者さんやご家族からの要請により、臨時的に医師が自宅に駆けつける診療行為で、あらかじめ計画されていず、患者さんの病状が急に変わったときなどに行います。一方、訪問診療はあらかじめ計画された定期的な診療で、患者さんの慢性的な病気に対して治療計画を立て、少なくとも月1回、定期的に訪問して診療します。どちらも在宅医療の一環ですが、制度上などできちんと区別されています。
 訪問診療では、定期的な診察を受けながら、例えば、次のような医療や検査が自宅内で受けられます。在宅酸素療法(肺の病気で慢性的な低酸素状態の患者さんなど)、在宅人工呼吸(神経難病などで呼吸に必要な筋力が著しく弱って呼吸ができなくなった患者さんなど)、胃ろう(おなかの皮膚に胃まで通じる細いチューブを留置し、胃に直接栄養を注入する方法。脳卒中などで食べ物を飲み込む働きが障害された患者さんなど)、中心静脈栄養(心臓に直接流入する太い静脈にカテーテルを留置し、必要に栄養や水分を点滴する。消化管の病気などで経口摂取できない患者さんなど)、尿検査、血液検査、エコー検査、レントゲン検査(胸部や腹部など)などです。

慢性疾患から末期のがんまで、さまざまな病気に24時間365日対応

 訪問診療を受ける患者さんの病気はさまざまです。高血圧や糖尿病で、足腰がしっかりしていたころは通院されていたのに、ご高齢になり、一人では外出が難しくなって、付き添いのご家族も同伴が難しくなった場合も訪問診療を行うことがあります。がんの末期となり、最期までご家族と家で過ごしたい方も利用されています。また、医療過疎地で周辺に訪問診療を提供する医療機関が他にないなどの特別な事情がある場合を除き、実施医療機関から訪問先まで16km圏内というルールがあります。このほか、病床のない診療所でも訪問診療を行っています。この場合は、病床のある病院と連携してチームを作り、入院が必要になったときは連携先の病院に入院します。訪問診療は、24時間、365日、往診に対応できる医療体制を作り、患者さんが「最期までお家で過ごしたい」、「最期まで今いる施設で過ごしたい」という気持ちに寄り添います。
 さらに訪問診療では、介護にあたるご家族、または施設職員の協力も欠かせません。時には週末だけ患者さんに介護施設に宿泊していただくショートステイや、自宅でできない検査も兼ねて短期間入院していただくレスパイト入院なども行って、介護にあたるご家族にその間ゆっくり休んでいただくこともできます。
 病状の不安定な患者さんを24時間体制で診る上で大きな力を発揮するのが訪問看護師です。病状の変化があって心配なときは、患者さんやご家族はまず訪問看護師に連絡し相談します。必要であれば自宅に駆けつけて看護し、さらにかかりつけ医に連絡し、電話だけで対応できないときは医師が往診します。
 勤医協苫小牧病院でも24時間365日の医療体制で訪問診療を行い、胃ろう、人工呼吸、末期がんなどの患者さん、要介護状態で通院が大変な患者さんたちのお宅や施設に訪問しています。病院の診察室と違い、住み慣れた場所でお会いするので患者さんが主人で私たちが客人です。病院よりもリラックスした状態でさまざまなお話ができます。

過去の医療コラム