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かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

子宮内膜症

医師画像
札幌白石産科婦人科病院
総院長
明石 祐史
2000年獨協医科大学卒業。03年札幌医大婦人科学講座入局。15年より現職。札幌医科大学臨床教授。日本産科婦人科学会専門医。日本産科婦人科内視鏡学会、日本内視鏡外科学会各技術認定医。技術認定医審査委員。麻酔科標榜医ほか。医学博士

生殖年齢の女性特有の疾患で、誰がなってもおかしくない
重い生理痛のほか、不妊の原因になっていることも

重い生理痛の場合は子宮内膜症の疑いも

 子宮内膜症とは、子宮内膜あるいはそれに似た組織が子宮以外の場所で発育・増殖する病気です。発症率は、生殖年齢(思春期から閉経期)の女性の10~20%程度。女性ホルモンであるエストロゲン依存性疾患であり、その発生には月経血の逆流による移植や排卵による悪化、胎生期からの誘導や遺伝的要因など複雑に関連しています。
 一般的に骨盤内の子宮や卵巣、ダグラス窩腹膜、および仙骨子宮じん帯などで発症しますが、膀胱や尿管、腟、腸管、腎臓、肺といった臓器で発症する稀少部位子宮内膜症も存在します。例えば、「へそにしこりができた」「息苦しい」といった患者さんを診察したところ、内膜症だった事例もあります。
 子宮内膜症の主な自覚症状は重い生理痛です。20~30歳代の女性の方で生理痛に悩む方は多いと思いますが、「市販薬が効かない」「学校や仕事を休んでしまう」くらい痛い場合は、子宮内膜症が関係していることも考えられるので、診断を受けることをお勧めします。また内膜症が不妊の原因になっていることもあり、不妊治療によって内膜症が見つかるケースもあります。
 子宮内膜症の診断は、超音波検査、内診、MRIで行うのが通常です。状況によっては採血で腫瘍マーカーを調べたり、確定診断のために内視鏡を用いることもあります。超音波検査も内診も、経膣ではなく、直腸から行うこともできます。

専門外来を開設し、専門的な相談に対応

 子宮内膜症の治療は、ガイドラインや日本産科婦人科学会の子宮内膜症取り扱い規約に沿った形で方針を組み立てていきますが、患者さんの状態や希望に合わせて提案させていただきます。通常、初期症状の場合は薬物療法による対症療法が主体です。生理痛が強い場合は、アセトアミノフェンやロキソニンといった非ステロイド系消炎鎮痛剤の服用がメインとなります。
 通常の鎮痛薬で痛みがとれない場合や子宮内膜症がみつかった場合には、低用量ピル療法、黄体ホルモン療法(ジェノゲスト)、GnRHアゴニスト/アンタゴニスト療法、ダナゾール療法などがあり、症状や状態に合わせて行います。
 また痛みが引かない場合や、チョコレートのう胞の破裂やがん化が気になる場合などは手術も適応になります。ガイドラインでは、40歳でチョコレートのう胞の直径が4cm以上であれば、手術が推奨されます。当病院では腹腔鏡下手術を得意としており、2023年は年間443例の実績があります。このうち、内膜症病巣除去術を96例実施しています。
 子宮内膜症の手術は、子宮へのダメージを考慮して、妊娠を希望する患者さんのケースでは第一選択にしないのが一般的です。しかし当病院では、数多くの実績をもとに、妊娠する力「妊孕能(にんようのう)」の温存ができる手術を最優先に考え、より多くの選択肢を提案するよう心掛けています。そのため、子宮内膜症が原因で不妊治療をしている患者さんの紹介実績も数多くあります。
 子宮内膜症は、女性であれば誰がなってもおかしくない病気です。最近は10歳代の若年性内膜症も増えています。生理痛は我慢するというのがかつての常識でしたが、生理痛に悩まずに日常生活を過ごせるようにする、知らずに子宮内膜症を悪化させない、そういった観点でも、早期にホルモン療法を行うことがスタンダードになりつつあります。
 薬を飲んでも治らないほど生理痛が重い場合、月経期間中に排便痛や性交痛などがある場合は内膜症が疑われますので、専門家を受診するようにしてください。なお当病院では子宮内膜症の専門外来を開設しています。専門的な相談に応じていますので、お気軽に来院してください。

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