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かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

自律神経失調症

医師画像
札幌ふしこ内科・透析クリニック
院長
角田 政隆
1997年防衛医科大学校卒業。航空自衛隊襟裳分屯基地にて勤務。その後北海道内の病院勤務を経て、2021年10月札幌市東区に医療法人惺陽会札幌ふしこ内科・透析クリニックを開院

交感神経と副交感神経のバランスの崩れで引き起こされる自律神経失調症。根本原因が慢性上咽頭炎であれば効果が期待できる治療法も

原因の分からない諸症状の悩み。
自律神経失調症かもしれません

 自律神経とは、意識することなく動いている心臓や呼吸、食後の消化・吸収、体温調整のための発汗など、内臓や血管の働きを24時間、休まずに調整してくれるシステムです。
 自律神経は、交感神経と副交感神経に大きく分かれ、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキのイメージの神経です。朝起きてから日中に活動しているときは交感神経の働きが強く、夜寝るときには副交感神経の働きが強くなるなど、そのバランスの中で人間は生きているのですが、何らかの原因で、そのバランスが崩れてしまうと、いろいろな症状を引き起こしてしまうわけです。これが自律神経失調症の特徴です。
 主な症状には、めまい、睡眠障害、下痢や便秘・胃もたれなどの消化器症状、あるいは疲労感や倦怠感、集中力の低下、微熱など、このほかにも何となく説明のつかない不調を訴える方が少なくありません。これらの症状に対して、患者さんは自分で考えられる診療科を受診するのですが、必要と思われる検査を行っても異常が見られない場合に、自律神経失調症と診断される方が結構いらっしゃるのです。患者さんが訴える症状に応じて、対症療法として内服薬や漢方薬などを処方される場合もありますが、それでも良くならない方が多いのが自律神経失調症の特徴と言えます。

副交感神経の働きを正常に整える
慢性上咽頭炎に対するEAT治療

 自律神経失調症の治療で重要となるのは、その根本原因である交感神経と副交感神経のバランスの崩れを正すことです。自律神経のバランスが崩れる原因はさまざまですが、実はその中で最も大きいと考えられているのが慢性上咽頭炎という病気なのです。上咽頭とは、鼻の一番奥、口蓋垂(こうがいすい)、いわゆる“のどちんこ”の裏にある喉の入口部分にあります。そこは空気を吸ったときに一緒に入ってきたウイルスや細菌を感知してバリア機能を果たす繊毛で覆われているとともに、ウイルスや細菌などの異物を攻撃して排除する役割を果たすリンパ球が多く存在していて、異物を排除するため、いつも免疫反応が起きている、炎症が起こりやすい場所と言えます。さらに上咽頭には、副交感神経にもある迷走神経をはじめ、さまざまな神経が集まっている場所でもあります。迷走神経は脳の延髄というところを出発し、頭~頸部、胸・腹部など多くの内臓に分布していて、その働きを調整しています。しかし、上咽頭の炎症が慢性化すると迷走神経の働きが影響を受けてしまい、そのために全身のさまざまな症状を来してしまうことが考えられます。
 そこで当院では、自律神経失調症などの症状を改善する方法として、慢性上咽頭炎の治療法である「上咽頭擦過療法(EAT治療)」を行っています。このEAT(イート)治療は、炎症を起こしている粘膜を修復する働きのある塩化亜鉛溶液(0・5%)を染み込ませた長い綿棒を使って、鼻と口から直接上咽頭に薬液をこすりつける方法です。強く、満遍なくこすることが重要で痛みをともなう治療ではありますが、治療時間は1分程度で済みます。治療は複数回受けていただく必要はありますが、治療効果は高く、これまで何をやっても治らなかったという多くの方から好評を得ています。日本病巣疾患研究会のホームページにEAT治療を行っている全国の施設が紹介されていますので、ご参考にしてください。
 また当院では、副交感神経を呼び起こして自律神経を調節することで、痛みやしびれなど、さまざまな症状に効果が期待できる「チクチク療法(保険外診療)」も行っています。EAT治療で効果が十分ではないという方には、2つの治療を併用することで、より高い効果が期待できます。原因不明の症状でお悩みの方は検討してみてはいかがでしょうか。

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