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変形性膝関節症

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紺野整形外科クリニック
理事長・院長
髙田 晃
1998年自治医科大学医学部卒業。岩手医科大学整形外科入局。2014年いとう整形外科病院(札幌市)勤務を経て、23年4月より現職。日本整形外科学会専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクターほか

加齢やけがなどが原因で、膝関節の軟骨が少しずつすり減ってしまうことで痛みが起こる病気。保存治療と手術に加え、新たな治療法の選択肢も登場

保存治療では良くならない、手術は受けたくない人に新たな選択肢

 変形性膝関節症とは、加齢やけがなどが原因で膝関節の軟骨が少しずつすり減ってしまうことによって、立ち上がったり、歩いたりすると痛みなどが起こる病気です。進行すると、階段の上り下りなど、日常生活の動作が困難になることがあります。
 診断は、基本的に症状とレントゲンで確定しますが、必要に応じてMRIで検査をすることもあります。
 治療の第一選択としては、痛み止めの鎮痛剤の投与や、ヒアルロン酸関節注射、運動や電気刺激、温熱やマッサージといった理学療法によるリハビリテーションなどの保存治療を行っていきます。比較的若い年代の方であれば、保存治療で痛みが取れて日常生活を支障なく過ごせるようになる方も多いですが、一度すり減った軟骨は元には戻らないため、多くの方で痛みが続きます。そして保存治療で良くならない場合は、一般的に骨を切って変形を矯正する膝の骨切り術や、人工関節に置き換える手術が検討されます。しかし、2023年6月から、変形性膝関節症の慢性的な痛みに対する新たな治療法として、ラジオ波(電磁波)の熱で末梢神経を焼くラジオ波治療が保険適用となり、保存治療と手術治療の中間に位置する新たな治療の選択肢として注目されています。

治療の持続効果は2年以上。
治療後は普通に歩いて帰れる

 ラジオ波治療は、これまでも肝臓や腎臓などの悪性腫瘍の治療法として内科領域で用いられています。変形性膝関節症に対する米国での臨床試験では、痛みの程度が半分になったという割合が74%、痛みの度合いの平均は10段階で3~4になったと報告されています。当院でも24年9月からラジオ波治療を始めました。
 治療は、変形性膝関節症と診断を受け、6カ月以上保存治療を続けても痛みが良くならないという方を対象に、エコーで観察しながら膝の痛みを伝える神経(膝の内側2カ所と外側1カ所)に電極針を刺し、ラジオ波という電流を通電させて神経を焼くことで痛みを遮断するという方法です。メリットとしては、これまで保存治療で良くならない場合の選択肢として手術しかなかったことに対して、選択肢が一つ増えたことで、手術を受けたくないという方にとっては朗報と言えること。治療は外来で45分程度で済み、局所麻酔で行うため治療後は普通に歩いて帰ることができます。さらに、ヒアルロン酸関節注射の治療効果が1~2週間程度であるのに対して、ラジオ波治療の持続効果は2年以上といわれていることが挙げられます。
 デメリットとしては、針を刺すときの痛みと、神経を焼く際に皮膚が少しやけどをしたような状態になることがあるといわれていますが、痛みは局所麻酔を多めに使うことで減らすことができますし、電極針の位置を工夫することで皮膚を保護しています。また、4人に1人の割合で効果が得られない場合もあるといわれていますので、侵襲性や効果などについて詳しく説明した上で患者さん自身に選択していただいていますが、当院で治療を受けた患者さんからは「痛くはなかった」「痛みが減って楽になった」「膝に水がたまらなくなった」と喜んでいただいています。仕事を休んで手術を受けたり入院している時間が取れない。だからと言って保存療法を受けるのに病院に通い続けるのも大変だという方にはお勧めの治療法だと思います。
 ただし、経験的にも、やはり4人に1人の割合で効果が得られないという方はいらっしゃいますので、その場合には、患者さんと相談しながら人工関節手術などの外科的治療を検討し、必要に応じて適切な施設を紹介しています。膝の痛みは年のせいだと諦めている方も少なくないようですが、いろいろな治療の選択肢がありますので、一度整形外科に相談してみると良いでしょう。

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