かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状
不整脈

- かずの内科循環器クリニック
院長
数野 祥郎氏 - 2005年広島大学医学部卒業後、アメリカ/Cedars-Sinai medical centerなどを経て、16年手稲渓仁会病院循環器内科副部長兼心血管インターべンションセンター・センター長就任。23年6月から現職
致命的な病気が隠れている場合もあるため、不規則な心拍のリズムが長く続く場合や、頻度が高い場合には専門医の受診を
治療の必要の有無を知るためにも、まずは専門医療機関の受診を
不整脈とは、心拍のリズムが不規則である、脈が速い、逆に脈が遅い、あるいは脈が飛ぶといった症状のことを言います。
不整脈が起こる原因は、そのタイプによってさまざまです。単に心拍リズムの異常だけではなく、狭心症や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患によるものや心臓の筋肉の変性、そのほか甲状腺の疾患、腎臓の機能低下にともなう電解質異常など、心臓以外の内科的疾患が原因で起こる場合もあります。
不整脈が見つかるきっかけは、健康診断で指摘される場合と、自覚症状で気付かれる場合の大きく2つと言えます。
健康診断で指摘を受けた方は、自覚症状がなくても必ず医療機関を受診して検査を受けることをお勧めします。自覚症状で気付かれた方は、胸が苦しいと感じる場合や、動悸の症状が長く続く、1週間に何回も起こるといった頻度が高い場合には、専門医療機関を受診した方が良いでしょう。自覚症状だけでは不整脈の原因やタイプが分かりませんし、場合によってはすぐに治療が必要な不整脈の可能性もあるからです。特に生死に関わるような不整脈、心不全を起こすような不整脈、脳梗塞を引き起こす不整脈のタイプは、積極的に治療する必要があります。
また、症状が1回きりでも失神をともなう場合、短い時間で自然に治まった場合であっても、実は治療する必要のある不整脈が起きている可能性もあるため、循環器科医という立場としては、少しでも気になる症状を感じたら、一度は医療機関を受診されることをお勧めします。
ご高齢の方は、動悸や息切れなどの症状を「年齢のせい」と思ってそのままにされる方が多く、中には症状がでないように生活のレベルをセーブし、あまり動かないようにしているという方もいらっしゃると思います。こちらの場合もやはり自己判断はせず、一度は検査を受けていただくことをお勧めします。
カテーテル治療により改善することも
予防には生活習慣病の管理が重要
不整脈の診断は、主に心電図検査で行います。一般的な検査では、検査時に不整脈が検出できずに診断が難しいこともありますが、その場合には24時間ホルター心電図検査を行うこともあります。また最近では、さらに不整脈の検出率の高い、最長7日間連続装着可能な検査機器なども導入されています。
治療が必要な不整脈を認めた場合には、患者さんの状態に応じて薬物治療、あるいはカテーテルアブレーション治療(経皮的心筋焼灼術)を選択します。特にこのカテーテル治療は近年かなり進歩をしており、不整脈が根治する確率も高くなっています。以前は不整脈の治療は薬物治療だけでしたが、薬の種類によっては違うタイプの不整脈を引き起こすリスクもあるため、最近の流れとしては積極的にカテーテル治療を行っても良いのではないかという意見が主流になりつつあります。カテーテル治療を行うと、薬を継続的に飲まなくても良くなる場合もあるため、患者さん個々の状態を診ながら、治療方法に関して検討していくことになります。
また、不整脈は生活習慣病と密接に関係していることもあります。特に心房細動というタイプの不整脈は、高血圧や糖尿病、喫煙、ストレスなどの生活習慣病とも関係が深いため、不整脈を含む心疾患全般、あるいは脳卒中の予防のためにも生活習慣病をしっかり管理することが非常に重要です。
何か気になる症状がある方は、高血圧や糖尿病などの循環器疾患につながる生活習慣病とともに、不整脈の診断や治療のできる専門医療機関に一度相談してみることをお勧めします。