ぶらんとマガジン社
ホームドクター

北海道、札幌市、旭川市、滝川市、苫小牧市、岩見沢市、函館市の病院情報
あなたの街のお医者さん検索、病院検索ガイド

かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

過活動膀胱

医師画像
坂泌尿器科北広島クリニック
院長
池田 龍介
1952年岡山県出身。金沢医科大学卒業。同医大泌尿器科講師、助教授を経て2004年教授に就任。日本泌尿器科学会専門医・指導医。医学博士

切迫性の尿意にトイレが近くなる頻尿・尿失禁、
苦痛の少ない検査ばかりなので、まず泌尿器科へ

高齢化が進む日本に増えている
誰もが罹患する可能性のある疾患

 過活動膀胱は「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまう」などの症状がみられる病気です。とても多くの方がこの病気で悩んでいます。どれか1つでも当てはまれば、過活動膀胱の可能性があります。40歳代は女性の方が多いですが、50歳代になると前立腺の問題で男性の方が少し多くなり、それ以降は男女とも同じくらいの比率で罹患しています。70歳代の4人に1人、80歳代だと3人に1人くらいの割合で、高齢になるほど増える傾向にあります。日本の人口構造を考えると、高齢化がますます進んでいるので患者さんも増えてきていると思います。
 過活動膀胱を治療するためには、原因を調べる必要があります。膀胱には尿をためる働きとそれを出すという働きの2つがあります。その働きを脳の中枢がコントロールし、脊髄がその情報を伝えるルートになります。この情報伝達に何らかの支障を来し、膀胱内部を収縮させる神経とそれを伸ばす神経のバランスが崩れ、排尿のメカニズムに狂いが生じます。主に脳梗塞やパーキンソン病、脊髄損傷など、脳や脊髄の病気や後遺症による神経因性と、男性の場合は前立腺肥大症、女性の場合は骨盤底筋のトラブルなど、神経とは別の原因による非神経因性があります。また、原因がはっきりしない患者さんも多く見られます。

行動療法と薬物療法が主な治療
他の泌尿器疾患との鑑別も重要

 過活動膀胱と同じような症状を持つ疾患がいくつかあるので、それを鑑別することも重要です。例えば頻尿、尿意切迫感、膀胱の痛みなどの症状がある間質性膀胱炎や尿道から侵入した細菌が原因で発症する細菌性膀胱炎、前立腺が炎症を起こし発症する前立腺炎、膀胱にがんや結石ができることもあります。症状だけでそれと決めつけず、不安を感じたら専門医にまず相談しましょう。
 過活動膀胱の検査は、まず過活動膀胱症状スコア(OABSS)というチェックシートへの記入から始まります。診察前に記入し、問診で確認して具体的な症状を明らかにしていきます。このスコアを出すことによって、ある程度結果が絞られてきます。過活動膀胱か、もしくはそれ以外の疾患かを見極めるためのスクリーニングとして尿検査を行います。この尿検査で膀胱炎であることが判明したり、血液が混ざっていることから膀胱がんが疑われることもあります。過活動膀胱との区別をするためにも尿検査は重要になります。
 過活動膀胱の主な治療は、行動療法と薬物療法です。行動療法とは、生活指導や膀胱訓練、骨盤底筋訓練などがあり、生活習慣や排尿習慣を変えることで膀胱の機能を調整し、膀胱収縮や尿意切迫感を抑制します。例えば膀胱に蓄尿する力をより回復させるリハビリですが、膀胱訓練という尿意を感じてから5分程度我慢し、少しずつ時間を延ばしてトイレに行く間隔が空くようにします。また、過剰なアルコールやカフェイン、水分を取りすぎないようにするなどの生活習慣の見直しも大切です。
 さらに、薬物療法によって改善することも期待できます。膀胱の収縮を抑える抗コリン薬や、膀胱の筋肉を緩めるβ(ベータ)3刺激薬の選択が一般的です。いずれもその効果には個人差や相性があり、早めに効果が出る方もいれば、十分な効果が見られない場合もあり、特に抗コリン薬は副作用として口内乾燥や便秘、排尿困難などが見られる場合もあります。薬物療法は、効果と副作用のバランスが重要になってきます。
 泌尿器科は受診しづらいと思われがちですが、過活動膀胱の検査は苦痛の少ないものばかりですし、他の重要な病気が隠れていることもありますので、ぜひ気軽に安心して受診していただきたいです。

過去の医療コラム