かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状
鼻副鼻腔炎(副鼻腔炎・蓄膿症)

- あたご耳鼻咽喉科
院長
愛宕 義浩氏 - 1996年北海道大学医学部卒業。北大病院、北海道がんセンター、市立札幌病院などを経て、2013年開院。日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医。補聴器相談医ほか
急性から慢性への移行や、症状の悪化を防ぐためにも正しい診断と適切な治療が大切。後鼻漏や色のついた鼻水を自覚したら耳鼻咽喉科に相談を
風邪などのウイルス感染や
アレルギー疾患が発症の引き金に
副鼻腔炎とは、鼻の周りにある副鼻腔と呼ばれる空間に炎症が起きている状態を言い、以前は「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれていました。副鼻腔炎のほとんどが鼻炎もともなっているので、最近は「鼻副鼻腔炎」と考えることが主流になっています。
鼻副鼻腔炎の原因は、風邪などにともなうウイルス性の感染症や、アレルギー性疾患が発端となっている場合もあります。
主な症状は、鼻詰まり、鼻水、鼻水が喉(のど)の方へ流れ落ちる後鼻漏(こうびろう)による不快感、咳などの呼吸症状、そのほかに頭痛、鼻や頬の奥の痛み、嗅覚障害などが挙げられます。これらの症状が発症から4週未満で治まるものを「急性鼻副鼻腔炎」と呼び、発症から4週以上、12週以上続くものを「慢性鼻副鼻腔炎」と呼びます。
急性から慢性に移行する原因は個人差もあり、はっきりとしたことは分かっていませんが、臨床現場の印象としては、アレルギー体質の方ほど慢性化しやすく、中でもアレルギー性鼻炎をお持ちの方は、症状がなくても潜在的に鼻副鼻腔炎をお持ちの方が多いように思われます。
例えば後鼻漏や鼻詰まりが常にあって咳払いをよくしていたり、口呼吸が癖のようになっていて自分では気にしていないという方の中に鼻副鼻腔炎が慢性化している場合もあります。
また、慢性鼻副鼻腔炎の中には鼻の中にポリープ(鼻茸)ができ、鼻の症状が悪化して日常生活に支障を来していたり、気管支ぜんそくにともなうことの多い指定難病の「好酸球性鼻副鼻腔炎」を発症している場合もあるため、症状が長引く場合には、一度耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
診断には、鼻腔内部の視診に用いる鼻鏡や、内視鏡(ファイバースコープ)を用いることが多いほか、必要に応じてCT検査などを行う場合もあります。簡便なレントゲン撮影も補助的に使用されます。
大抵は薬物療法で改善。
残りは内視鏡手術での効果に期待
治療は、初期の場合は鼻の中の炎症を抑えるステロイド薬などを吸入するネブライザー療法、抗菌薬やステロイド薬などの飲み薬、ステロイド点鼻薬、腫れに効く薬の投与や鼻水の吸引といった鼻処置や鼻洗浄など、症状に応じて行います。
また、これらの方法でも効果が十分でない場合は、抗生剤の中でも特殊な効果があるマクロライド系の抗生物質を通常の半量で12週間程度、長期にわたって服用するマクロライド少量長期療法を行うことで、慢性化した鼻副鼻腔炎にも効果が期待できます。ほとんどの方は、これらの薬による治療や漢方薬などで治りますが、それでも効果が得られない場合には手術を検討します。
昔は唇の裏側を切って骨に穴を開け、異常がある粘膜を剥がすという負担の大きな手術でしたが、現在は内視鏡を使って狭くなっている鼻腔を広げたり、副鼻腔の小さな壁を取り払ったり、あるいは鼻茸を取り除くなど、より安全で低侵襲な手術が行えるようになっています。ただし、手術を行っても再発する可能性があるため、アレルギーを持っている方は、しっかりとアレルギーに対する治療を行うことと、場合によっては鼻茸をともなう鼻副鼻腔炎に対して生物学的製剤の使用も有効と思われます。
鼻副鼻腔炎は、一般的な風邪が引き金となって起こることが多く、特に気管支ぜんそくや他の呼吸器疾患のある方は治りにくく、慢性鼻副鼻腔炎に移行しやすい傾向もあるため、正しい診断と適切な治療につなげるためにも、特になかなか治らない後鼻漏や色のついた鼻水などが気になるようであれば、早めに耳鼻咽喉科を受診すると良いでしょう。