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かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

肩関節周囲炎(五十肩)

医師画像
創成川通整形外科
理事長
江口 紀之
1997年帝京大学医学部卒業。札幌医科大学整形外科入局。道内主要病院勤務を経て、2017年江口整形外科理事長就任、現在に至る。日本整形外科学会専門医

慢性化すると治療が長引くだけでなく、ごくまれに手術が必要な場合も。“たかが五十肩”と自己判断せず、まずは早めに整形外科に相談を

腕が上がりにくい、手が後ろに回りにくい、肩の痛みの原因はさまざま

 肩関節周囲炎とは、一般的に四十肩や五十肩と呼ばれることが多く、40歳代、50歳代に多く見られ、レントゲンやMRIによる画像検査でも異常が見られないような、特別な原因もなく発生する肩関節の痛みや、動作に制限をともなう病態です。
 特徴的な症状としては、腕を上げるときや、手を後ろに回すときに痛みが出るというのが一般的で、女性の方ではエプロンを背中で縛るときや下着をとめるときなど、肩関節を内側にひねる動作によって痛みが出る(内旋痛=ないせんつう)ことが多いようです。さらに痛みが強い方では、夜間痛と言って、夜中に寝ているのもつらいほどの痛みをともなうこともあります。
 ただし、肩関節の痛みの原因には、肩関節周囲炎だけでなく、肩関節の中にある腱が擦り切れて痛みが起こっている「腱板損傷」、腱の周りに石灰が沈着することによって強い炎症を起こす「石灰沈着性腱板炎」、肩関節を構成している上腕骨と肩甲骨の隙間が狭くなることで、その間にある腱が引っかかりを起こし、そのことによって炎症が生じて痛みが起こる「インピンジメント症候群」といった病態などが原因の場合もあり、画像診断では分かりにくくても、痛みの部分や動きの状態を見ることで正しい診断につなげていきます。

内服薬や注射薬、リハビリによる
早期改善のために早めの受診を

 治療は、急性期と慢性期で分かれます。急性期はかなり痛みも強いため、まずは安静を保ってもらいながら、痛み止めの内服薬や、場合によっては関節内注射を行うのが一般的です。慢性期になると痛い期間が長く続いているほど肩関節を動かさないでいるために関節が硬くなってしまう(関節拘縮=かんせつこうしゅく)ことがあります。そのために急性期の痛みが治まったとしても関節が硬くなってしまうことで動かせる範囲が狭くなって痛みが出てくることがあるので、その場合には、硬くなった関節を動かせるようにするためのリハビリテーションを中心とした治療が重要となります。
 治療の効果は、病院で治療を開始する時期によってもかなり異なります。急性期の早い時期に受診され、関節拘縮のない段階であれば内服薬や注射薬で治まることもありますが、発症してから2、3カ月たってくると、既に肩の拘縮が始まっているので、リハビリテーションを行ってもかなり時間がかかることになると思います。ただ、患者さんの中には“五十肩はごく一般的な病気で、自然に治る”と思われていて、放置している方も多くいらっしゃいます。もちろん五十肩は自然に治る場合もありますが、その間に関節が硬くなってしまい、場合によっては「凍結肩」と言って、関節がガチガチに硬くなってしまい、リハビリテーションだけでは限界があり、外科的治療が必要となる場合もごくまれにあります。肩に痛みを感じるようであれば、“たかが五十肩”と放って置かず、できる限り早い時期に受診していただき、医師による判断のもと、必要な処置や治療を受けていただくことが、早く治り、治療を長引かせないためにも重要だと思います。
 五十肩の特別な原因は分かっていませんが、普段から肩の関節が硬くならないような運動やストレッチを行うことで、多少は予防に役立つと思います。例えば、腕を上げて“万歳”の動作をする。多少の痛みがあって自力で上げるのがつらい場合は、痛くない方の手を使って痛い方の腕を上げたり、壁に手を付けて痛くない程度の負荷を掛けながら腕を上げていく。または両手を後ろに回して、痛くない程度に左右に腕を引っ張りあう。手が届かない場合は、棒やタオルを使って左右の腕を引っ張りあうことで、肩の関節や筋肉の柔軟性を高めたり、硬さをほぐしてあげるようにすることをお勧めします。

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