かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状
緑内障

- スワン アイ クリニック
院長
木村 祐介氏 - 2005年北大医学部卒業。北見赤十字病院、和歌山医療センター勤務を経て、12年開院。日本眼科学会眼科専門医。日本白内障屈折矯正手術学会、LIME研究会、日本近視学会各会員
知らないうちに視野が欠けてくる緑内障。
症状がなくても一度は眼科受診を
40歳以上の17人に1人が緑内障。働き盛りの男性は通院中断による進行リスクが高い
緑内障は眼の神経の病気で、徐々に、見える範囲(視野)が狭くなってきて、最終的には見えなくなってしまう疾患です。40歳以上の17人に1人が緑内障です。年齢とともに有病率は増加し、70歳になると10人に1人が緑内障になります。緑内障の初期は自覚症状がないために、緑内障の患者さんの9割が、自分が緑内障だと気付いておらず、治療を受けていません。そのため、緑内障は健康診断や他の病気で眼科にかかった時に発見されることがほとんどです。せっかく早期に緑内障が発見されても、通院が途絶えてしまい、いよいよ見えなくなる直前の状態にまで進行してしまってから、再来される患者さんも少なくありません。多忙な働き盛りの男性は、通院中断による緑内障進行リスクが高いです。
緑内障は、日本人の中途失明の原因の1位ですが、早期に発見して、点眼治療などにより、眼圧(眼の硬さ)を下げることによって、視野が狭くなるスピードを遅くすることができます。緑内障は眼の水=房水(ぼうすい)の流れ出口である、隅角(ぐうかく)が広いタイプ、すなわち開放隅角緑内障と、狭いタイプの閉塞隅角緑内障に分けられます。多いのは、開放隅角緑内障で、緑内障全体の8~9割ほどを占め、隅角の線維柱帯(せんいちゅうたい)という網目構造が目詰まりを起こして、房水が眼の外に排出されづらくなり、眼圧が上がります。
点眼、レーザー(SLT)、手術で緑内障を治療。抗酸化サプリメントにも期待
残念ながら、緑内障で失われてしまった視野を回復することはできませんので、早期発見、早期治療が重要です。眼圧を下げることにより、視野障害の進行を遅くすることができます。
開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障の治療は、眼圧を下げる治療として、まず点眼薬を用いるのが一般的です。線維柱帯にレーザーを照射して房水の排出を促進する治療(SLT)は緑内障の早期に行うことが効果的だと分かってきて、国内の治療件数が増えてきています。
SLTは手術ほどの眼圧下降作用はないものの、緑内障点眼1成分と同等の眼圧下降作用があるといわれており、緑内障点眼特有の充血や色素沈着やアレルギーなどの問題点がないため、私も積極的にお勧めすることが増えてきている緑内障治療の一つです。2023年1月からSLTのレーザー装置を導入し、23年は11眼、24年は42眼にSLTを施行し、視野障害の進行を抑える効果を実感しています。ただし、効果には個人差があり、8割の患者さんには効果があるものの、残念ながら2割の患者さんには治療に反応しません。また、SLTの治療効果は永続するわけではなく平均で2年ほどで眼圧が再び上昇してくるといわれているので、眼圧が再び上昇してきたら、再度SLTを行ったり、点眼治療を強化したり、手術可能な施設を紹介するなどをしています。
点眼やレーザー治療が不十分な場合に手術が行われます。手術では線維柱帯を切開したり、房水を眼の外に導く流出路を新たに作ったりして眼圧を下げる方法があり、眼に埋め込むデバイスが用いられることも増えてきています。
閉塞隅角緑内障に関しては、根本治療は白内障手術です。水晶体摘出によって、隅角が広がるからです。隅角に癒着が形成される前に、手術を完了できれば、緑内障の進行は完全に停止します。
緑内障の原因ははっきりとは分かっていませんが、眼圧のほかに酸化ストレスが関与しているといわれており、抗酸化物質(アスタキサンチン、ポリフェノール、ルテイン、ビタミンE、ビタミンC等)をサプリメントや食品で摂取することによる病状の進行抑制が期待されています。