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かかりつけ医が伝える、あの病気、この症状

慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)

医師画像
さっぽろ南大橋クリニック東札幌院
院長
柴田 敬典
2013年札幌医科大学医学部卒業。道内主要病院勤務を経て、24年7月より現職。日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会各専門医。日本ヘリコバクター学会感染症認定医ほか

胃痛や胃もたれなどを繰り返すようなら、一度胃カメラ検査を。ピロリ菌が原因の慢性胃炎であれば除菌治療で症状の早期改善を

自覚症状が分かりにくい慢性胃炎。健診で指摘を受けたら要再検査を

 胃炎には、急性と慢性があります。急性胃炎は、何らかの原因によって胃の粘膜に急性の炎症性変化が起こるものです。原因として多いのは、解熱鎮痛剤の内服やアルコールなど、ストレスが原因で起きることもあり、これらの原因自体が改善されれば割と急速に治癒します。慢性胃炎は、いつ発症したのかが分かりにくく、胃カメラ検査で胃の粘膜に炎症や萎縮と呼ばれる変化が起こっている状態を確認することで診断が付きます。原因は、自己免疫性胃炎という疾患が要因となっている場合もありますが、多くはヘリコバクター・ピロリ菌の感染によるもので、その場合はピロリ菌の除菌治療を行います。
 症状は、急性胃炎の場合には急激に発症する上腹部痛、吐き気やおう吐が代表的ですが、慢性胃炎は基本的にあまり症状がありません。高齢の方では食欲不振などを訴えたときに慢性胃炎が原因であることもありますが、多くは他の症状で受診されたり、健康診断で胃のバリウム検査を受けて胃炎が疑われた場合などに、胃カメラ検査の所見で見つかることがほとんどです。また、吐いた息や血液、尿、便などからピロリ菌の有無を調べる方法(尿素呼気試験、抗体測定法、便中抗原測定法)や、胃カメラ検査で胃の組織を採取して検査する迅速ウレアーゼ試験などのピロリ菌検査の結果から、慢性胃炎と診断されることもあります。

ピロリ菌の除菌治療で慢性胃炎の早期改善と胃がんリスクの軽減を

 ピロリ菌に関しては、2013年からピロリ菌の除菌治療が保険適用になり、この10年でかなり減ってきていると思います。除菌治療が始まった当初は1次除菌で7割くらいの成功率だったのですが、その後、胃薬などの開発も進み、今では1次除菌だけで9割以上の成功率で、2次除菌まで含めると、ほとんどの方が除菌できるようになっており、ピロリ菌感染患者さんは確実に減ってきていると言えます。また、中学生を対象とした学校健診でのピロリ菌検査などの事業も功を奏しており、全国的にもピロリ菌感染者数は相当に減ってきていると思います。
 ピロリ菌が感染する原因は、ご年配の方であれば、幼少期に井戸水を飲んだり、自然の中で感染することが多かったのですが、現在は自然の中で感染することはほとんどありません。考えられるのは、幼少期にピロリ菌を持っている親御さんからの食べ物の口移しなどによる感染ではないかと思われますが、最近はそういった行為も減っており、除菌治療後の再感染もほとんどありません。
 ピロリ菌を除菌することで胃の粘膜の炎症は弱くなります。しかし、一度萎縮した粘膜はすぐには治りません。萎縮の状態など個人差もありますが、元のきれいな状態に戻るまでには数年から10年ほどかかると思います。ただし、かなり萎縮が進んで粘膜の状態が置き換わってしまう(腸上皮化生)と、元の胃の粘膜には戻らない場合もあります。また、ピロリ菌は胃がんのリスクを高めることが分かっていて、除菌することで胃がんのリスクは下がりますが、ゼロになるわけではなく、実際に除菌後の胃がんの発生も経験していますので、消化器内視鏡専門医としては、除菌治療後であっても、年に1回は胃カメラ検査を受けていただくことが重要だと思います。
 患者さんの中には、以前に検査を受けた経験から“苦しい検査”というイメージを持たれていて、胃カメラ検査に抵抗のある方もいるようですが、現在では内視鏡もかなり進歩し、細いカメラを鼻から挿入する鼻カメラ(経鼻内視鏡検査)や、鎮静剤を使って眠った状態で受けられる方法もありますので、胃痛や胃もたれなどの症状を繰り返す方や、健診などで再検査を勧められた方は、ぜひ一度胃カメラ検査を受けていただきたいと思います。

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