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乳がん

医師画像
札幌駅前しきしま乳腺外科クリニック
院長
敷島 裕之
1989年北海道大学医学部卒業。同大医学部第2外科入局。2011年4月1日開院。日本乳癌学会乳腺専門医。日本外科学会専門医。検診マンモグラフィ読影認定医。医学博士

セルフチェックで唯一自己発見できる“がん”。定期検診と合わせて、日頃から自分の乳房を意識して生活することと、気になる症状は早めに専門医の受診を

日本人女性の9人に1人がなるがん。早期発見・早期治療で完治に期待

 乳がんは日本人女性が罹患するがんの第1位で、9人に1人がなるといわれています。特に30歳半ばから増え、45~49歳までの罹患数が一番多く、さらに60歳代にも2回目のピークがあります。
 しかし、乳がんは早期発見・早期治療で完治することが期待できます。そのため、わが国では40歳を過ぎたら自覚症状がなくても、2年に1回は乳がん検診を受けることが推奨されています。ただし、婦人科系のがんは若くても発症しやすいほか、特に乳がんは遺伝的要因により発生リスクが高くなるため、家族歴などのある方は30歳くらいから検査を受けてみた方が良いと思います。さらに、更年期障害でホルモン補充療法を長く続けている方や、若くても生理痛などの症状の緩和や、そのほかの婦人科疾患の治療目的でピルを長く服用している方も乳がんを発生するリスクが高くなるため、積極的に検診を受けてほしいと思います。
 その一方、乳がんが見つかる確率は、検診よりも自覚症状をきっかけに乳腺科を受診されて見つかることの方が多いのです。その意味では、まず乳がんの症状をよく理解するということも大切です。一番多い症状は、硬く触れるしこりです。そのほかにも乳房の張りや痛み、左右の大きさが違うといって受診される方もいます。あるいは乳頭からの分泌物に血が混じっていたり、乳頭のかぶれ、皮膚にくぼみが見られるなど、これらのような変化や症状には注意が必要です。そして、そのためにもお伝えしたいのが「ブレスト・アウェアネス」という概念です。日頃から自分の乳房に関心を持ち、乳房を意識して生活するということです。普段の自分の乳房の状態を知っておくことで、ちょっとした変化や症状にも早く気付くことができ、乳がんの早期発見・早期治療につなげられる、女性にとって非常に大切な生活習慣としていただければと思います。

乳がんのタイプに応じた適切な初期治療で遠隔転移や再発を予防

 乳がんと診断された場合は、手術と薬と放射線の大きく3つの方法を組み合わせながら治療を行っていきます。治療の組み合わせは、がんの進行度、いわゆるステージ(臨床病期)と、乳がん細胞が持つ遺伝子の特徴によって分類される4つの「サブタイプ」というものがあり、これら2つの要素から乳がんの病状を見極め、それぞれの病状に応じて治療方法を組み立てていきます。
 治療では、基本的に手術は必須です。手術方法には乳房温存術と全切除術があり、全切除の場合には乳房再建術が合わせて検討されます。また、がんという病気は、手術を終えたとしても、将来的に肺や肝臓、骨などに転移(遠隔転移)してしまう可能性があり、転移するとなかなか治りにくい病気でもあるため、転移や再発を防ぐためにも初期治療が大切になります。そこで重要となるのが薬物治療です。手術や放射線が局所の治療であるのに対して、薬による治療は全身に行きわたらせられる全身療法なのです。そして、そこで重要となるのがサブタイプであり、個々のがんのサブタイプに応じて、ホルモン療法や抗がん剤療法、抗HER2療法などの薬物療法を選択して、より効果的に転移や再発の予防につなげていくことができるのです。
 最後に、患者さんの中には症状があるからと怖がって受診を避けてしまい、受診されたときにはかなり進行している場合もあります。逆に症状があるからといって、必ずしも乳がんではない場合もありますので、怖がって受診しないということだけは避けてほしいと思います。いずれにしても、乳がんに向き合う上で大切なことは3つです。「定期的な検診の継続」「日頃のセルフチェック」「気になることがあれば自己判断せず早めに専門医を受診する」。これらを守っていただければと思います。

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