診療室からのメッセージ
めまい
- 函館西部脳神経クリニック
院長
小保内 主税氏 - 1995年函館五稜郭病院脳神経外科、2004年函館脳神経外科病院 勤務を経て、05年開業。日本脳神経外科学会認定専門医。日本脳卒中学会、日本頭痛学会各会員ほか
めまいの原因はさまざま。腰の病気によるめまいは、あまり知られていないため、耳鼻科で異常が見つからない場合は腰のMRI検査もお勧め
めまいの原因にもいろいろ
耳、脳、心臓、目、そして腰
「グルグル回る感じ」は脳卒中や耳の病気を予想します。「ふわっとする」「立ち上がった時だけ」気が遠くなる感じや、目の前が暗くなる感じは脳への血流障害、心臓病を連想します。めまいは体のバランス調整の問題ですが、それには耳、脳が関わっていることはご存じのとおりです。さらに、目に問題があってもふらつきます。左右の目で視力に大きな差がある場合など、足元を見ても焦点が合わずにグラつきます。
これら以外に、腰の病気から、ふらつき、めまい感が出ることがあります。腰の病気というと、ヘルニアなどからの足や腰の痛みや足のしびれが思い出されますが、それだけではなく感覚障害からふらつきを起こすことがあるのです。深部感覚と言いますが、関節が伸びているのか、曲がっているのか、体のどこにどういう力が入っているのかといった情報が、動きの調整には大切で、特に2本足で立っている人間にとっては足腰からの深部感覚情報は極めて重要です。深部感覚の情報は意識されることはありません。腰の悪い方では、足腰の深部感覚がうまく上に伝わらずにバランスが悪くなり、めまいとして自覚されるのです。
例として、有名な疾患である腰部脊柱管狭窄症の患者さんの典型的な初期症状には、「足の裏がぶよぶよしている感じがする」とか、「足の裏に水ぶくれができているみたいだが、見てみると何ともなっていない」、あるいは「いつでも履物の中に、ごみか砂、細かい石が入っているみたいだ」というのがあります。こういう方たちは、しばしば歩行時のふらつきも訴えます。特に暗いところが苦手です。深部感覚の情報はいちいち大脳が意識して判断していては時間がかかりすぎて転んでしまいます。かなりの部分は無意識レベルで反射的に処理されるのです(姿勢反射と言います)。
この場合のめまい、ふらつきの特徴は、暗いところで症状が強くなることです。具体的には、夜間にトイレに起きた際、トイレまでの経路が薄暗いとふらついてしまい、最悪の場合、転んでけがをしてしまいます。なぜかという、明るいところでは目で見てバランス調節ができますが、暗いところでは、目が頼りになりませんので、足腰の感覚が重要になります。また、寝起きや、歩行途中に方向転換をした際にもバランスを崩しやすいです。姿勢が、変わった際にも、重心の変化を足腰の力の入り具合で判断しているのですが、その変化に瞬時に対応できなくなるのです。
めまいは吐き気、おう吐をともない「死んでしまうのではないか」という恐怖を覚えることもあります。でも、つらいだけで心配はいりません。めまいがすると脳は「体に毒が入った」と判断し、それを体の外へ出そうとするからなのです。
実際には多くのめまいは、必ずしも重大な病気で起こるわけではありません。 睡眠不足、長時間のスマホやパソコン作業、肩こり、脱水、気温差、精神的な緊張など、身近な要因で症状が出ることはよくあります。姿勢や筋肉のこわばりから起こるケースが少なくありません。
耳鼻科的疾患からのめまいが最も多いと考えますが、耳鼻科での診察では異常が見つからないことも多いです。今回ご紹介したように、腰に原因があることも少なくありませんので、先にあげたような腰部脊柱管狭窄症の症状に覚えのある方はもちろん、深部感覚障害は意識に上ってきませんので足腰に自覚症状がない方も、めまいが続く場合には腰のMRI検査をしてみることをお勧めします。
また、めまい患者さんのごく一部では脳に原因があることもあります。その場合には、最悪の場合には命に関わることもありますので、やはりMRI検査を受けた方がいいでしょう。

