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眼瞼下垂症

医師画像
札幌禎心会病院
形成外科医
須貝 明日香
2008年札幌医科大学医学部卒業。札幌医科大学形成外科ほか、道内主要病院の勤務を経て、25年6月より現職。日本形成外科学会専門医。日本創傷外科学会専門医。日本形成外科学会領域指導医

「まぶたが下がって見えにくい、目が疲れて頭痛や肩こりがひどい」。それは眼瞼下垂かもしれません

目の筋肉が衰えて起こる病気
顔の印象が変わってくることも

 眼瞼下垂症は先天性のものと後天性のものに分けられ、今回は後天性の眼瞼下垂症についてお話します。
 眼瞼下垂症とは、上まぶたを持ち上げる機能の低下によって十分に目が開かなくなる病気です。まぶたは、まぶたを持ち上げる筋肉(上眼瞼挙筋、ミュラー筋)が、まぶたの芯となる構造(腱板)を引っ張り上げることで開きます。筋肉と瞼板は、腱膜という組織でつながっており、この腱膜がたるんだり、筋肉や筋肉を動かす神経に異常が起こると、筋肉の力が瞼板に効果的に伝わらず、まぶたが上がりにくくなります。
 後天性眼瞼下垂症の最も多い原因は加齢によるものです。年齢と共に、筋肉とまぶたをつなぐ腱膜が緩むことで起こる眼瞼下垂は、加齢性あるいは腱膜性の眼瞼下垂と呼ばれます。また、ハードコンタクトレンズを長期にわたり使用している方や、まぶたを強くこする癖のある方も、同様に筋肉とまぶたをつなぐ組織がもろくなって眼瞼下垂症になることがあります。加齢にともない皮膚がたるみ、上まぶたの縁を越えて皮膚が垂れ下がることで視野障害やまつげが目にささるなどの症状が出ることがあります。これは上眼瞼皮膚弛緩症と呼ばれ、加齢性の眼瞼下垂症に合併することが多いです。
 ほかにも、まぶたを切ったり目をぶつけたりして筋肉や腱膜、神経を傷つけてしまうことや、眼瞼けいれんや重症筋無力症など筋肉や神経接合部に異常が起こる病気によっても眼瞼下垂が生じます。
 眼瞼下垂症になると、視界が狭くなり、“眠たそうな目”“目付きが悪い”などの印象につながることもあります。また、目を開きにくくなることから無意識に額の筋肉を使ってまぶたを持ち上げようとするため、眉毛の位置が上がり額に横ジワが生じるようになります。また、無理して目を開くために必要以上の筋肉を過緊張にするため、頭痛や肩こり、眼精疲労につながることもあります。

治療ではさまざまな手術が行われる。
まずは原因を特定することから

 まぶたが下がっている原因を明確にして、それに合わせた手術を行います。加齢性眼瞼下垂症に合併することの多い皮膚弛緩症では、上まぶたの皮膚が弛緩してまつげを越えて下垂することから、余っている皮膚の切除を行います(余剰皮膚切除術)。上まぶたの皮膚を切除する場合と、眉毛の下で皮膚を切除する場合があります。まぶたの重みが取れることで目が開きやすくなります。
 腱膜性の眼瞼下垂症に対しては、眼瞼挙筋前転法を行います。上まぶたの皮膚を切開し、たるんだ腱膜や筋肉を前方に引っ張り、糸で瞼板に固定する手術です。まぶたと筋肉のつながりが修復されることで腱膜のたるみが改善し、筋肉の力がしっかりと瞼板に伝わることで目が開きやすくなります。
 まぶたの筋肉が機能していない方の場合、まぶたと筋肉のつながりを修復しても効果が得られないため、基本的には筋膜移植法を選択します。一般的には太ももの外側にある大腿筋膜を細く短冊状に加工し移植します。額にある前頭筋とまぶたをつなげることで、眉毛を上げたときに連動して目が開くようになります。
 余剰皮膚切除術および眼瞼挙筋前転法は、局所麻酔で手術を行います。手術中に目を開けたり閉じたりしていただいて、バランスを見ながら少しずつ調整するためです。筋膜移植法は全身麻酔下に行います。いずれも保険内で実施可能な治療法です。治療にかかる実際の費用は、術式、入院の有無、麻酔方法などによって異なります。
 眼瞼下垂症は、視野が狭まり、ものが見にくい以外にも、頭痛や肩こりなどをともなうことで、日常生活に支障を来すこともあります。眼瞼下垂症を疑う症状が現れたときは、ぜひご相談ください。

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