診療室からのメッセージ
逆流性食道炎
- 南さっぽろ内科消化器クリニック
院長
熊谷 祐氏 - 2007年札幌医科大学医学部卒業。関東の大学病院および関連病院、札幌市内病院勤務を経て、25年7月1日開院。日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会、日本肝臓学会各専門医ほか。医学博士
胸やけや呑酸は逆流性食道炎の特徴的症状。長引く症状は他の病気が原因の場合も。正しい診断と適切な治療を受けるためにも一度は内視鏡検査の受診を
食の欧米化や刺激の強い飲食、
喫煙、肥満、ストレスも要因
最近「胸やけがする」、「苦く酸っぱいようなもの込み上げてくる(呑酸=どんさん)」という症状はありませんか?これらは逆流性食道炎が疑われる症状として一番多いものです。このほかにも意外と知られていないのですが、長く続く咳や、胸の痛みなども逆流性食道炎が原因となっていることもあるのです。
逆流性食道炎の主な原因は、脂っこい食べ物をよく食べるといった、いわゆる食生活の欧米化ということが一般的になってきたことや、コーヒーやアルコール、辛い食べ物といった刺激の強い物を多く摂取していたり、喫煙や肥満、ストレス、食後すぐに横になるといった生活習慣もリスクとなります。また、ピロリ菌感染症に対する除菌治療が普及したことで、胃が元気になって胃酸が多く分泌されるようになり、それが何らかのきっかけで逆流し、逆流性食道炎を起こしているという、ピロリ菌除菌後の逆流性食道炎という病態も増えている印象があります。
食事や生活習慣の改善と、
内服薬による治療が有効
治療は、胃酸の分泌を抑える薬の服用や、生活習慣の改善で行います。薬は、PPI(プロトンポンプ阻害薬)と、新しい薬としてP-CAB(カリウムチャネル競合型胃酸抑制薬)が主に使用されています。一般的に2週間から1カ月しっかり飲んでいただければ依存性もなく治療効果が期待されます。
ただし、患者さんの中には生まれつき胃と食道の境目にある下部食道括約筋という筋肉が緩くなっていたり、食事の欧米化や加齢による筋力の低下などによって、食道裂孔ヘルニアという病態にあると、薬だけでは良くならないことがあるため、その場合には手術が選択肢となることもあります。しかし近年では、より効果的な薬の登場などにより、手術に至るケースはかなり減ってきています。
その一方、食事や生活習慣もリスクとなるため、それらの改善がうまくいかなければ、薬で良くなった後でも再発を繰り返す可能性はあり得ます。そのため、患者さんによっては薬の8週投与を追加したり、長く継続して服用を続けている方もいます。
同様の症状でも別の病気が原因の場合も。一度は内視鏡検査を
逆流性食道炎は、患者さんの症状から問診による予測的診断を行い、まずは薬物治療を開始します。当院では2週間程度を一つの目安として、十分な改善がみられない場合には、消化器内視鏡専門医の立場から胃カメラ検査をお勧めしています。
そもそも逆流性食道炎は、胃酸を多く含む胃の内容物が食道内に逆流して起こる胃食道逆流症(GERD)の一つで、食道粘膜にびらん(表皮の欠損)や潰瘍などの異常な病変が見られる病態のことを言います。その一方、内視鏡検査をしても食道粘膜にびらんや潰瘍などの異常な病変が見られない場合を非びらん性胃食道逆流症(NERD)と言います。そのため逆流性食道炎だと思っていたものが、実はNERDだったということもあり、それは胃カメラで検査をしてみなければ分かりません。
このほかにも、NERDと同様に胃・大腸カメラで検査をしても異常が見られない病態には機能性ディスペプシアという病気もありますし、実は食道がんや胃がんが隠れていたということもあり得るため、胸やけや呑酸、そのほかにも胃の不快な症状が長く続くようであれば、一度は胃カメラ検査を受けることをお勧めします。
さらに、自己判断で市販薬を飲み続けているがなかなか良くならないという方や、内視鏡検査を受けたことがないという方も、ぜひ一度、消化器内視鏡の専門医にも相談してみることをお勧めします。

