診療室からのメッセージ
加齢黄斑変性
- ふじた眼科クリニック
院長
藤田 南都也氏 - 浜松医科大学卒業。東京医科歯科大学・東京大学眼科学教室、都内病院勤務、東大助手を経て2001年開業。日本眼科学会認定眼科専門医。札幌市医師会白石区支部長
欧米では成人の失明原因の第1位。日本でも第4位。物がゆがんで見えたり、視力の低下が気になるようであれば早めに眼科の受診を
食生活の欧米化で増加傾向
検査機械の発達で早期発見も可能
加齢黄斑変性は、加齢によって網膜の中心部である黄斑部と呼ばれる部分に障害が起こって、見ようとするところが見えなくなる病気です。欧米では成人の失明原因の第1位で、日本では欧米ほど多くはないといわれていましたが、食生活などの変化もあって近年では増加傾向にあり、日本でも失明原因の第4位となっています。特に、近年では検査機械の発達によって、以前では見つからなかった症例も分かるようになってきたことも増加の要因の一つとなっているのではないかと考えられます。
主な症状は、網膜の腫れや、網膜の下に液体がたまると網膜がゆがむため、見る物の中心部がゆがんで見えるようになります。さらに黄斑部の障害が進むと、中心部が見えなくなり、視力が低下していきます。
診断には、初めに視力検査を行い、視力の低下を確認します。また、アムスラー検査と言って、碁盤の目のような図を見て、格子状の線がゆがんで見えることでも加齢黄斑変性が疑われます。このほかにも網膜の状態を詳しく調べる方法として眼底検査や光干渉断層計(OCT)などが有用です。
加齢黄斑変性は、一番数が多い「新生血管型(旧称・滲出型)」と「萎縮型」の大きく2種類に分けられます。新生血管型は眼球の内側にある脈絡膜の血管に変化が起こり、その異常な血管(脈絡膜新生血管)が網膜色素上皮の下に侵入、またはそれを突き破って網膜を障害するタイプです。萎縮型は網膜色素上皮細胞が徐々に萎縮していき、網膜が障害されて視力が徐々に低下してくるタイプです。
新生血管型にはVEGF阻害薬。
萎縮型にも間もなく治療薬が登場予定
治療にはいくつかの方法があります。その代表は薬物治療です。新生血管型の加齢黄斑変性に対しては、脈絡膜新生血管の発生に関係すると考えられている血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害することで、脈絡膜新生血管を退縮させる治療法です。現在認可されているVEGF阻害薬は複数あり、いずれも目の中に直接注射をして効果を発揮させるという方法です。治療は、最初に目の中に4週ごとに3~4回注射し、その後は定期的に診察を行い、症状の改善状況や再発などを診ながら、必要に応じて単独で注射を追加などして治療を行っていきます。以前は全く治療方法がないと言われていましたが、ここ10年くらいで視力の維持、あるいは改善が期待できるようになりました。VEGF阻害薬による治療は、保険診療で受けられますが、それでも自己負担額も決して安いものではありませんでした。しかし、最近はバイオシミラー(ジェネリック医薬品相当)が複数登場しており、自己負担額も減りつつあります。
萎縮型の加齢黄斑変性に対しては、残念ながら、これまで日本において医療用医薬品はなく、開発が待ち望まれていました。しかし、間もなく効果が期待される治療注射薬が登場する予定ですので、諦めずにもう少しお待ちいただければと思います。
また、薬物治療以外に光線力学的療法という治療法もあります。
加齢黄斑変性の発症に関しては、喫煙が憎悪因子であることが分かっていますので、予防という意味では禁煙が最も効果があると言えます。また、ビタミンCやE、βカロチン、亜鉛などを含んだサプリメントも進行の予防効果が期待されるほか、食事に関しては肉類よりも魚類、果物や野菜を多く摂取する食生活を推奨しても良いといわれています。
加齢黄斑変性は、その病名から加齢にともなう高齢者の病気と思われがちですが、40歳代でも発症していることがあります。物がゆがんで見えたり、視力が低下している場合には、加齢黄斑変性以外の眼科疾患が隠れていることもあるため、早めに眼科を受診することをお勧めします。

