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イボ痔(内痔核・外痔核)

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くにもと病院
院長
安部 達也
1993年旭川医科大学医学部卒業。日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員。日本臨床肛門病学会技能指導医・評議員。認知症サポート医ほか。旭川医大臨床指導教授。医学博士

肛門疾患のなかで最も多いのが「イボ痔」。遺伝的素因よりも生活習慣や排便習慣が影響する疾患なので、健康的な日常生活を維持することが大切

日本人のおよそ半数が一生に一度は
経験するという「イボ痔」

 イボ痔(正式名称は痔核)とは、便秘や下痢、長時間の運転や立ち仕事、妊娠・出産、力仕事などによる肛門への負荷によって、肛門が“うっ血”して腫れた状態を指します。肛門の内側にできるイボを「内痔核」、外側にできるイボを「外痔核」と呼びます。症状は排便時の出血、肛門の痛み、肛門から内痔核が出てくる「脱肛」などがあります。イボ痔は生活習慣病の一種で、便秘や下痢を繰り返したり、トイレで長時間いきんだりすると症状が悪化します。排便の際に最後まで出し切らないと気が済まない方や、硬い便を強引に出そうとする方は、かなりの確率でイボ痔になります。一方、十分な食物繊維の摂取や適度な運動など、便通を促進する生活習慣を取り入れることで症状を緩和することができます。しかし、イボ痔は45~65歳の働き盛りの方に多い病気なので、治療に専念することが難しく、定年まで我慢して症状が悪化するケースも少なくありません。症状が軽い場合は、生活習慣の改善や市販薬によって回復が期待できます。しかし、排便のたびに出血する、歩いているだけで脱肛する、便が拭ききれない、肛門のただれ、下着の汚れなどの症状がある場合は、肛門科の受診をお勧めします。年齢によっては大腸がんの検査が必要となる場合もあり、特に肛門の近くにできる直腸がんは、イボ痔と症状が似ているので要注意です。日頃からがん検診を受けていない方は大腸の検査も兼ねて早めに病院へ行きましょう。

切らずに治す「ジオン注射」によって
大きく進歩した痔核治療

 ジオン注射療法とは、ジオン注射液(有効成分は硫酸アルミニウムカリウム水和物とタンニン酸)を内痔核に直接注射することによって、痔核を固めて小さくし、出血や脱肛症状を改善する治療法です。ジオン注射は局所麻酔や下半身麻酔を用いて、日帰りまたは短期入院で行うので、低侵襲手術に分類されます。従来の痔核を切除する方法(痔核根治術)と比較して、手術後の痛みや出血が格段に少なく、治りが早いのが特徴です。ジオン注射液は2005年に日本で発売され、当病院の例では20年間で1万例以上の方にジオン注射を実施。治療成績は3年累積無再発率(3年間再発しない確率)が92・6%、6年累積無再発率が72・8%でした。これらの結果は痔核根治術の成績に比べやや劣るものの、ジオン注射は術後の痛みがほとんどなく、合併症が少ない(発熱1・4%、潰瘍0・9%、狭窄0・4%など)というメリットがあります。一方、ジオン注射は外痔核には注射できないという欠点があります(肛門の外縁は敏感なので痛みが出やすいため)。当病院ではこの欠点を克服するため、内痔核にはジオン注射を行い、外痔核だけを切除する「ジオン併用療法」を開発しました。この方法は中等症から重症の混合痔核(外痔核をともなう内痔核)にも対処可能で、国内における標準的手術になっています。当病院でのジオン併用療法の5年累積無再発率は92・5%と良好で、術後合併症の発生率も3・5%(発熱1・7%、出血0・9%、膿瘍0・4%など)と低水準です。
 肛門科は、恥ずかしい、痛そう、怖いといった理由から、受診のハードルが最も高い診療科です。実際には診察は1分間ほどで、痛みもわずかです。近年はジオン注射の導入によって治療の選択肢が広がり、手術にともなう痛みが大幅に軽減されています。市販薬を巧みに使いこなして、最後まで病院に行かずに“しのぎ切る”方もいますが、肛門に常に違和感があるのは不快ですし、生活の質が低下します。治療を受けられた方の多くが「もっと早く診てもらえばよかった」と話しています。市販薬が効かなくなってきた、日常生活に支障を来しているなど、お悩みの方は、気軽にご相談ください。

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