診療室からのメッセージ
下肢静脈瘤
- 森山病院
外科部長
診療技術部部長
多田 裕樹氏 - 旭川医科大学医学部卒業。森山病院外科・血管外科医師、診療部部長。日本外科学会専門医・心臓血管外科専門医。日本血管外科学会認定血管内治療医。胸部ステントグラフト、腹部ステントグラフト各指導医・実施医。下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医・指導医ほか
長時間の立ち仕事・座り仕事、妊娠・出産の経験や、加齢にともない、下肢血管の拡張や足のだるさ、むくみ、かゆみ、痛み、足のつりなどが気になる場合は専門医に相談を
誰にでも起こり得る病気。早期には複合的理学療法などで症状も軽快
下肢静脈瘤は、足の静脈弁の異常で血液が逆流して静脈がコブ状に浮き出る病気です。長時間の立ち仕事・座り仕事や妊娠・出産などの負荷により、静脈圧が上昇して血管の拡張を来したり、加齢などのため静脈壁が弱くなったり、弁機能が失われることで逆流を生じ、さまざまな足の症状が出ます。
誰にでも発症する可能性のある病気ですので、下肢の血管の拡張や足のだるさ、むくみ、かゆみ、痛み、筋肉の痙攣(けいれん=足のつり)などが気になる場合には、静脈瘤の可能性を考えて検査を受けることをお勧めします。特に重症化した場合には、すねなどに皮膚の色素沈着を生じたり、潰瘍を形成する場合もありますので、そのような症状に心当たりがあれば早期の受診を考えてほしいと思います。
治療は大きく分けて①複合的理学療法および生活状況についての見直しと、②手術、の2つがあります。①の複合的理学療法には、弾性ストッキングやバンデージを用いた圧迫療法や運動、マッサージ、スキンケアなどがあります。症状、血管病変の程度、患者さんそれぞれの生活状況から実行・継続が可能かなどによってお勧めしていくとともに、下肢血流うっ滞につながりやすい生活状況になっていないかアドバイスをしていきます。
手術術式は多彩。適応や利点・欠点を考慮し、最適な治療を提供
症状や血管病変の程度が一定以上の方には②手術をお勧めする場合もありますが、患者さんそれぞれのライフスタイルに合わせて対応できるよう、外来手術・入院手術いずれにも対応しています。手術術式で多いものには、血管内焼灼術と血管内塞栓術、静脈瘤切除術がありますが、それぞれの術式の適応や利点・欠点などを考慮し、さらにはそのほかの術式なども応用しながら最適な治療を目指しています。
血管内焼灼術は、約1~2mmのレーザーファイバーや高周波カテーテルを弁不全の逆流血管に挿入し、異常部分を閉塞する手法です。従来主流であったストリッピング手術に対して低侵襲・短時間で治療を受けることができる、現在の静脈瘤治療の主役とも言えるものです。治療に際して熱エネルギーを生じるため、疼痛や周囲の熱傷(やけど)などを避けるため局所麻酔(Tumescent Local Anesthesia:TLA)を行いますが、麻酔をすることによる注射時の痛みや手術時間がやや長くなってしまうなど、患者さんへの負担も存在します。
そこで当病院では血管内塞栓術を2024年から導入しております。血管内に医療用の接着剤(グルー)を注入し、血管を閉塞させる治療法で、焼灼と異なり手技時の疼痛や熱傷の懸念、手術時間を低減することができます。薬品に対するアレルギーの可能性などに配慮して症例の選定、治療後のフォローにも留意しています。
下肢静脈瘤に対する近年の治療法の進歩は目覚ましく、より負担を少なく、かつより良い治療を当病院でも目指しておりますが、本当に重要なのは未病の予防と重症化の予防と考えています。肥満や下肢の負担などがリスク因子にもなるため、運動や食生活習慣の改善が効果的で、立ち仕事や座り仕事で長時間同じ姿勢を続ける場合は、足のストレッチ、マッサージを取り入れてください。バランスの取れた食事や適正体重の維持も重要となります。
最後に、当病院では専門資格を持った医師の豊富な手術経験のもと、患者さんそれぞれに適した治療法を提供するよう努めております。26年度から医師の増員、デイサージェリー(日帰り手術)室の整備などで治療体制が強化されていきます。静脈瘤に限らず、下肢の症状でお困りの際にはお気軽にご相談ください。

