診療室からのメッセージ
すい炎
- ひらた内科・内視鏡クリニック
院長
平田 幸司氏 - 2012年北海道大学医学部卒業。24年10月開院。日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会各専門医・指導医。日本胆道学会、日本膵臓学会各認定指導医ほか。医学博士
症状と重症度がイコールではない病気。突然の強い腹痛はすい炎の可能性も。アルコールの大量飲酒者や胆のう結石がある人は要注意
腹部診察・血液検査・画像検査で診断
基本治療は点滴と経腸栄養
すい炎は、急性すい炎と慢性すい炎に大きく分かれますが、今回は主に急性すい炎について解説します。
急性すい炎とは、すい臓に急激な炎症が起こる病気で、症状は腹痛(特に上腹部痛)や背部痛、吐き気や発熱などがありますが、90%以上は強い腹痛で、しかも突然発症するので、自覚しやすい病気といわれています。
主な原因は、男性はアルコールの大量飲酒によるもので、40~50歳代の中年に起こりやすいといわれ、女性は膵管(すいかん)と胆管の合流部である乳頭部に胆石が詰まることによる胆石性のすい炎が多く、高齢の女性に多くみられます。また血液中の中性脂肪高値も急性すい炎の原因となりますが、近年増加傾向であることが報告されています。このほか外科手術や内視鏡処置後に発症する医原性のもの、降圧剤や免疫抑制剤などの影響による薬物性のもの、生まれつきの膵管や胆道の奇形によるもの、すい臓がんが隠れている場合など、原因は多岐にわたります。
診断は、医師による診察(問診、触診、打診など)、血液・尿検査、画像検査の3つで行います。血液・尿検査では主にリパーゼやアミラーゼといったすい臓の酵素や、CRPなどの炎症反応が上昇していないかを確認します。画像診断は腹部超音波検査がよく用いられますが、造影剤を使ったCT検査が最も有効です。
これらの検査結果から、診療ガイドラインに基づいて重症度判定を行い、重症度に応じた観察および治療を行っていきます。治療の基本は、とにかく早期の点滴(細胞外液)による十分な水分補給が重要となります。急性すい炎では、強い炎症により血管の外へ水分が漏れ、脱水状態に陥ってしまいやすくなるからです。以前は、抗菌薬も投与したほうが良いとも言われていましたが、現在は軽症では不要、重症でもばい菌感染した場合のみで良いという報告が多く、必ずしも必要ではありません。さらに昔は絶食が推奨されていましたが、現在は腸に問題がなければ、小腸を保護し、しっかりと機能させるためにも、また激しい炎症で消耗したエネルギーを補うためにも、48時間以内に経腸栄養(鼻からチューブを入れて、できれば小腸に直接栄養を送る)を行うことが重要だといわれています。
重症化すれば多臓器不全や感染性膵
壊死など、致死率も上がる怖い病気
また、脱水により臓器が虚血となり多臓器不全になるだけではなく、逆に血管から漏れ出した水分が胸部や腹部にたまってしまい、さまざまな臓器に損傷を与えてしまうと多臓器不全を起こすこともあるため、投与する点滴の量にも気をつけなければなりません。さらに、すい臓やその周囲にできた壊死部や液体に感染が起こると、致死率もかなり高くなってしまうため、こちらも注意が必要です。現在では積極的な点滴・栄養投与に加え、感染部に対する治療方法も開腹手術による外科的治療から、超音波内視鏡を使って胃からすい臓にステントをつなげ、感染部の壊死物質を排出させるといった、治療効果の高い内科的治療が行えるようになったこともあり、昔は20%ほどであった重症患者さんの致死率は6~7%まで下がっています。しかしながら、いまだに一定の割合で亡くなる方がいる怖い病気と言えます。
急性すい炎は、改善した後も再発の予防が重要です。アルコールの大量飲酒を避けることや、胆石の治療を行うなど、原因に対する予防や治療を行いましょう。また改善後もすい臓の機能が回復せず、糖尿病や他の疾患を発症する場合もあるため、治療後も定期的に受診し健康管理に努めることが大切です。特にアルコールは慢性すい炎の原因であることも多く、糖尿病や、すい臓がんの発症リスクも高めるということを知っておいてほしいと思います。

