診療室からのメッセージ
好酸球性鼻副鼻腔炎
- 手稲クローバー
耳鼻咽喉科
院長
関 伸彦氏 - 2002年札幌医科大学医学部卒業。札幌医科大学耳鼻咽喉科助教などを経て、15年手稲クローバー耳鼻咽喉科院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会専門医ほか。医学博士
においを感じない「嗅覚障害」が特徴的な症状。的確な診断を受けるためにも、鼻を得意とする耳鼻咽喉科に一度相談を
白血球の一種である「好酸球」が
悪さをする「鼻のぜんそく」
鼻副鼻腔炎とは、俗にいう「ちくのう症」のことで、さらに急性や慢性など、いくつかの分類があり、そのうちの一つが「好酸球性鼻副鼻腔炎」です。多くの鼻副鼻腔炎は薬や手術で治りますが、手術を行っても治りづらいのがこのタイプです。近年、患者さんの割合としては増えてきているといわれていて、食生活の問題や、アレルギー疾患の増加など、いろいろなことが要因として挙げられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。この治りづらく再発しやすい鼻副鼻腔炎では、白血球の一種である「好酸球」という細胞が悪さをしていることが分かり、好酸球性鼻副鼻腔炎と呼ばれるようになりました。ちなみに、好酸球が気管の中で悪さをするのが「ぜんそく」であることから、患者さんには「鼻のぜんそく」と説明することもあります。
嗅覚障害が最大の特徴
鼻茸やぜんそくを合併する場合も
症状としては、一般的にネバネバした鼻水、鼻づまり、後鼻漏(鼻水がのどに下がる)、頭重感などが挙げられますが、好酸球性鼻副鼻腔炎では、においが弱い・しない「嗅覚障害」が最大の特徴です。さらに、鼻茸(鼻ポリープ)や気管支ぜんそくを合併する方が多いのも特徴の一つと言えます。
2015年に「難病」に指定
基本的な治療の柱は手術
好酸球性鼻副鼻腔炎の診断方法は、2010年に厚生労働省に難治性疾患研究班が立ち上げられ、私もその研究員の一員として加わり、診断基準が作られました。具体的には、鼻内の診察、内視鏡検査、CT検査、血液検査によって、好酸球性鼻副鼻腔炎の可能性があるかどうかを大まかに診断し、最終的には組織検査を行って診断を付けます。2015年からは中等症・重症の好酸球性鼻副鼻腔炎は「難病」に指定されています。
治療は、ステロイドという薬を飲むことで、ほとんどの患者さんに効果があります。しかし、副作用があり治療を継続することができないため、基本的な治療の柱となるのは手術治療です。手術によって一度鼻内をきれいにしてから薬を継続し、鼻洗浄などの処置をして、良い状態を維持することが目標となります。術後、再発時には生物学的製剤という注射の薬を使う場合があります。使用には一定の条件がありますが、高い治療効果が期待できます。
なかなか良くならない、再発を繰り
返す患者の中に一定数いる可能性
好酸球性鼻副鼻腔炎は治りづらく(難治性)、手術をしても再発することがある(再発性)ために難病に指定されている病気で、症状の改善は簡単にはいかないのが前提だと思います。ただ、たくさんの患者さんを診察していると、正しく診断されていなかったり、適切に治療されていない患者さんが多い印象があります。鼻内の診察だけでは診断が付かないことが多く、この病気を疑って診察しなければ正しい診断が付きにくいため、これまで「特に問題ありません」と言われたり、単に「副鼻腔炎」と診断され治療を続けているが、なかなか良くならない、もしくは再発を繰り返すという方の中に好酸球性鼻副鼻腔炎の患者さんが一定数いる可能性があると考えられます。また、正しく診断された場合でも、「治りづらいし再発するから手術をしなくてもいいんじゃない?」という考え方もあるようですが、鼻の専門家の間では「手術が治療の柱」であることは共通認識です。その意味でも、好酸球性鼻副鼻腔炎の特徴的な症状でもある、においがしづらい、あるいは全くにおいがしない、といった嗅覚障害が気になるようであれば、鼻を得意としている耳鼻咽喉科に一度相談してみることをお勧めします。

