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受診の心構え
~かかりつけ医を持つということ~

病気を不安に思うのは誰でも同じこと。
病気に対して素人である私たちは、
医療のプロである医師に全てを任せるしかない。
しかし現在では、毎日のようにテレビでは健康番組が放送され、
インターネットを使えば知りたいときに
知りたい情報を大量に得ることができる。
ただし、その中には正しい情報もあるが、誤った情報もあり、
多様な情報に流され、誤った道に
迷い込んでしまった人もいるだろう。
病気に不安を持ったとき、「受診の際の心構え」として
大切なことについて伺った。

医師画像
木村 眞司
札幌医科大学医療人育成センター副センター長・教養教育研究部門教授(英語担当)兼医学部総合診療医学講座(附属病院総合診療科)

テレビなどの健康情報に惑わされてはいけない

「受診の際の心構え」について、私自身の考えを率直に言えば、お薬手帳を持って、とにかく「かかりつけ医」に受診し、不安に思うことなど、何でも相談することが一番だということです。また、あえて言うとすれば、あまりテレビの健康番組は見ない方がよいということ。インターネットで病気について調べることもあまりお勧めしません。
 それはなぜか。テレビについては、特に「●●を食べたら体によい」という話題が多く見られますが、私が患者さんに話していることは、「食べて健康になる食べ物はありません」ということです。ビタミンだ、納豆だ、などと次から次へと食材や食品が紹介されますが、今の日本には普通に生活ができている人でビタミンが不足するような人はごく少数です。逆に「あまりたくさん食べないという方向を心掛けた方が健康になります」と話しています。「●●が体によい」という健康情報には惑わされない方がよいと思います。
 また、健康食品を月5000円以上買っている人には「お金を使い過ぎですよ」ということも話しています。実際、痩せている方が長生きなことが多いですし、病気も少ないです。太っている人、いわゆる肥満の人というのは、そもそも一般的に食べる量が多いわけですから、糖尿病やその予備軍になる人も多く、その結果として動脈硬化が起こりやすくなります。動物実験でも、痩せた動物の方が長生きすることが分かっています。健康食品を食べるということは、より食べる方向にあるわけです。その意味でも、「健康のために食べる」ことよりも、「健康のためにいかに食べないか」ということが重要になってくると考えられるのです。一般的には「食事は1日3食しっかりと食べましょう」と言われる人が多いと思いますが、3食をしっかり食べることで、食べ過ぎになってしまう人は多いと思います。1回の食事の量や内容のバランスということもあるとは思いますが、私個人としては「1日2食くらい」で十分ではないかと思っています。

ネット情報を精査し判断することは素人には難しい

 インターネットの活用については、医療機関を探すという目的ではよいと思いますが、病気について勉強し理解するという目的ではあまりお勧めしません。医学の知識はあまりにも膨大で、医師でさえ大学で6年間、その後約10年間修行して、16年間の勉強と経験を積んでやっと一人前といわれるのです。ちょっとやそっと勉強したくらいでは分からないと思います。私自身でも分かっていないことはいっぱいあります。ですから、その部分は医師に任せていただきたいと思います。そして、あまり余計な知識は身に付けず、素直な気持ちで医療機関にかかってもらった方がよいと私は思います。
 もう一つの理由としては、例えば雑誌や書籍には第三者による編集のプロセスが入っていますが、ホームページや個人のブログなどでは、正確を期したものもありますが、本人の思いだけを書き連ねているだけのものも数多く見られます。その内容が正しいか誤っているのかは素人では判断できませんし、誤った情報を鵜呑みにしてしまったり、自分に都合のよいものだけを選び、都合よく解釈し、信じきってしまい、医療の現場で医師の説明を素直に聞けなくなってしまうなど、結果的に悪い方向に流されてしまうようなこともあり、それはとても危険なことです。
 また、「はやっている」「名医だ」といった評判や情報も、必ずしも正しいとは言えません。例えば、患者さんは自分の欲しいものを提供してくれる医師のもとに集まる傾向があります。薬が欲しい、注射をしてほしい、優しくしてほしい。しかし、診断によって薬は必要なく、注射をする必要のない場合もあります。すると患者さんの中には、「●●では薬をくれない」といって批判する人もいるわけです。逆に、薬を飲まなくても治る病気でも薬を処方してもらえると、「●●はたくさん薬をくれる優しい先生」となるわけです。ようするに、腕のよい名医でも患者さんに厳しいために悪くいわれるような医師もいれば、必ずしも腕がよいかどうかは分からないが優しいと評判の医師もいるわけです。そのことからも、顔の見えない人から発信された評判や情報だけで判断するのは本当に難しいのです。
「受診の際の心構え」について、大切なことの一つとして、テレビやインターネットの情報に左右されないようにしてください。まずは信頼できる身近な人から紹介された医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。そして、「かかりつけ医」になり得る医師かどうか、自分の直感を信じてみることから始めてはいかがでしょうか。

まずは一度受診を。
「違う」と感じたら替えてよし

 しかしながら、病気に不安を感じた時に、かかりつけ医となり得る「任せられる医師」をいかに見極めるかが問題になるわけです。自分の直感とは言いましたが、これも容易なことではないかもしれません。医師の腕もあるし、相性もあります。腕が良くても相性が悪い人もいますし、特に相性というものはお互いの受け止め方の問題もあり、とにかく直接かかってみなければ判断のしようがありません。とはいっても、腕がよくて相性のよい医師を永遠に探し続けるというわけにはいきません。先ほども話しましたが、家族や友人、身近な知り合いに聞いてみたり、あるいはインフルエンザなどの予防接種や健康診断、ちょっとした風邪などの症状でかかってみて、医師との相性や、信頼できそうかなど、しばらく通ってみてはいかがでしょうか。
 我田引水になりますが、私は日本プライマリ・ケア連合学会の副理事長の一人で、「総合診療医」です。プライマリ・ケアとは、簡単に言うと「身近にあって、何でも相談に乗ってくれる総合的な医療」のことであり、その役割を担うのが総合診療医です。その意味では、総合診療医は「かかりつけ医」には適任だと思います。しかし、「総合診療科」という看板は掲げられないため、総合診療医を探すとすれば、連合学会のホームページから探さなければなりません。ただし、まだまだ数は少なく、十分とは言えません。しかも、総合診療医としての腕はよくても、相性はやはり直接かかってみなければ分かりません。
もちろん、総合診療医の資格を持っていなければ幅広く総合的に患者さんを診ることができないというわけではありません。看板に出している専門しか診ないという医師もいるようですが、専門外でも総合的に診ることのできる医師もたくさんいます。いずれにしても、一度は受診してみなければ分からないというのが、残念ながら現実なのです。
 そして、一度かかりつけ医と決めたからといって、必ずしもその医療機関にかかり続けなければいけないということはありません。医師との相性というものは、最初の受診でだいたい分かると思いますが、医師の腕は簡単に判断できるものではありませんので、しばらくはかかり続けてみるしかありません。しかし、「何か違うな」と感じたなら、自分のため、「患者本位の医療」という考えのもと、他の医療機関に替えてみることも必要だと思います。

セカンドオピニオンを活用することも一つの手段

 ただし、医師は万能ではありませんし、医師も人の子です。見間違いや、考え違いなどもあると思います。病気の見立て、いわゆる診断も、例えばAかBかとはっきり割り切れないものがあり、AとBが重なり合った領域にある病気もないわけではありません。その場合には、医師によって診断も治療も違う見立てとなることは考えられますので、必要に応じてセカンドオピニオンを考えてみることも大切だと思います。そして、「他の医師にも診てもらいたい」とセカンドオピニオンを求めた場合に、分かったといって紹介してくれたり、手紙を書いてくれる医師は「良いかかりつけ医」になると思います。
あるいは医師の方から、自分の専門以外のことや、より専門的な検査や治療が必要な場合、そのことを正直に話してくれ、その道の専門医を紹介してくれるなど、きちんと相談に乗ってくれ、その後のフォローまで手配してくれるような医師も、「よいかかりつけ医」になると思います。
 ちなみに、何かを聞いたときに、「分からないからどこか専門の医療機関に行ってみたら」と言うだけの医師はバツです。私の嫌いな言葉は「うちじゃない」です。自分の専門ではないから他の医療機関に行ってくださいということです。その言葉だけはいいたくありません。

専門医とのパイプ役もかかりつけ医の役割

 現在、私は札幌医科大学附属病院のほかに、市立美唄病院で週1回、道立羽幌病院で月1回、広域紋別病院で3カ月に1回診療を行っています。患者さんの中には、不安が強すぎ、いろいろな医療機関にかかっていて、かかりつけ医がたくさんいるという人がいます。
 例えば、血圧と糖尿病と胃腸科の専門医にそれぞれかかっているという人がいます。特に地方の都市では、何時間もかけて遠くの医療機関に通っているという人もいます。身体的にも経済的にも負担は大きいでしょう。しかも、1カ所のかかりつけ医であれば3つで済む薬を6つも飲んでいたり、よく見ると3カ所で胃薬が処方されているということもあります。そして、患者さんの中には、いろいろな医療機関で処方された薬に対してまで不安になってしまい、「この薬は飲んでも大丈夫でしょうか?」と聞きに来る人がいるのです。こうなってしまっては何のための医療なのか分かりません。
 専門医志向など、患者さんの気持ちも分からなくはありませんが、全ての病気に対して幅広く総合的に患者さんを診ることができるのが、かかりつけ医の役割なのです。そして、かかりつけ医では対応が難しい患者さんのことを頼るのが専門医であると思うのです。ですから、患者さん自身は専門ということにこだわり過ぎることなく、基本的には1カ所で全てが済み、必要に応じてそれぞれの病気に対する専門医がいる医療機関と密接に連携できている、そんな一人の医師をかかりつけ医として持つことの方が、その人にとってもよいことだと思うのです。

「よいかかりつけ医」となり得る条件とは

 私が思う「よいかかりつけ医」の条件として、まず患者さん自身と相性が良いということを前提に挙げるとすれば、
1.自分の考えや、どういう診療を行っているか、情報開示をしっかりと行っている。
2.検査結果をきちんと説明してくれる。
3.親身になって相談に乗ってくれる。
4.患者さんのことを理解しようとしてくれる。
5.患者さんにとって何がベストであるかを考えてくれる。
6.薬はなるべく最小限に、減らそうとしてくれる。
7.分からないものは分からないと、正直に話してくれる。さらに、それは自分だけが分からないレベルのことなのか、現在の医療では分からないことなのか。そして、分からないが様子を見ていいものなのか、専門医に相談すべきものなのか、全てにおいて隠すことなく正直に相談してくれる医師は信頼に値するでしょう。
8.「一緒に考えてくれる」3、4、5の項目に重複しますが、世の中には、AでもBでもCでも良いという治療はたくさんあります。それについての説明はするが、後は自分で決めてくださいと投げられてしまっては、素人である患者さんにはどうしようもありません。そこを一緒に考え、一緒に判断してくれるということも大切です。
9.(4の項目にも通じることですが、)患者さん自身のバックグラウンドを分かってくれるということ。家庭環境や仕事のこと、さらには経済事情など、話したい人も、話したくない人もいるとは思いますが、それらを分かったうえで診療にあたってくれることはとても望ましいと思います。
10.(6と9の項目にも関連しますが、)コスト意識がある医師もよいと思います。ただし、そういう医師は残念ながら非常に少ないと思います。
11.(患者さんには分からないかもしれませんが、)常に勉強を怠らず、新しい医学知識を持っている医師であることも大切です。その意味では、若い医師は新しい知識を豊富に持っています。ただし、経験はベテランの医師に比べると少ないです。しかし、ベテランだからと言って、必ずしも腕がよいかは分かりませんし、若くても腕のよい医師はいます。医師を選ぶというのは、本当に難しいことです。

「統べる医師」こそが時代の要請でもある

 物事はどうしても専門分化し、それは今後もさらに進んでいくと思います。しかし私は、「統(す)べる人(医師)」こそが必要だと思っています。特に高齢化社会ということを背景に考えるならば、一人の患者さんが持っている病気は必ずしも一つだけとは限りません。繰り返しますが、それぞれの病気に対する専門医をかかりつけ医として持っている場合、お薬手帳などをきちんと活用していれば心配はないと思いますが、活用されていなければ、それぞれの専門医からそれぞれの病気に対する薬が処方されるわけです。単に同じ効果の薬が重複しているだけであるならまだしも、その中には薬同士で悪影響を及ぼすものがあったり、効果を打ち消し合ってしまう薬が処方されていることもあるのです。それでは薬を飲んでいる意味は全くありません。
 現実問題として、いろいろな病気があるからといって病気の数だけ医療機関にかかることはできません。まだまだ進むであろう高齢化社会ということから考えても、一人の患者さんの全体を鳥瞰(ちょうかん=幅広く見渡す)して調整でき、大抵のことは診られる、そういう医師が今の世の中の要請だと思います。総合診療医はまだまだ少ないですが、総合診療医でなくても、身近で何でも相談に乗ってくれ、患者さんを全体的に診ることのできる医師はいるはずですので、ぜひ探してみてください。テレビの健康番組やインターネットで病気のことを調べるよりも、そういう医師をかかりつけ医に持つことができれば、不安も解消され、早く確実に安心を得られるのではないでしょうか。
 人生の中盤、30、40歳代を迎えたら、少しずつ自分の体のことを意識し、かかりつけ医を探すということを意識してはいかがでしょうか。