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日常を変えた新型コロナウイルス

正しく恐れる「知識」を得よう

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横田 伸一
札幌医科大学医学部微生物学講座教授
1985年北海道大学理学部化学科卒業。87年同大大学院理学研究科化学専攻修士課程修了。住友化学工業㈱生命工学研究所、住友製薬㈱総合研究所、㈱エイチ・エス・ピー研究所を経て、2000年札幌医科大学医学部微生物学講座、13年より現職。日本細菌学会理事、日本感染症学会評議員ほか。薬学博士(東京大学)

2020年初頭にその存在が世界に報道された新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、瞬く間に拡大し、世界中で猛威を振るうこととなった。
以来、全国的な緊急事態宣言の発出や、まん延防止等重点措置の要請・適用などにより感染者数は一時的に減少を見せるものの、ウイルスは次々と変異を繰り返し、いくつもの感染拡大の波を起こし、私たちはその度にそれらの波を乗り越えては来たが、いまだ収束(終息)は見られない。
しかし、現在は発生当初の状況とは大きく事情は異なる。と同時に、新型コロナに関するたくさんの情報が飛び交い、その中には、科学的根拠のある情報から推定の情報、根拠のない迷信まがいのものまで含まれている。
「ウィズコロナ時代」という新たな日常を生きていくうえで必要な「知識」をきちんと整理し、日々の行動につなげていきたい。
(取材日・22年5月20日)

感染力が強く、重症化しにくいなど、感染拡大への条件がそろったオミクロン株が第6波の要因に

 新型コロナが発生してから2年以上にわたって、私たちはこのウイルスと付き合ってきました。しかし、昨年(2021年)11月末に新たな変異株のオミクロン株が確認され、今年(22年)に入って、日本に上陸して増え始め、その前のデルタ株に置き換わって、第6波となりました。このオミクロン株の拡大は新型コロナのパラダイムシフト(転換期)と言っていいほどに、さまざまことがガラッと変わってしまいました。
 私たち一人一人が行うべき感染対策そのものは変りませんが、オミクロン株の特徴として、一つは従来株に比べて感染力が高く、第6波がこれまでで最大となりました。さらに当初から軽症が多いと言われており、危機意識が低かったこともあったかもしれません。もう一つは、感染の年齢層が、アルファ株以前は20歳代くらいまでだったのが、デルタ株で10歳代に、オミクロン株では年齢的にも感染対策が取りづらい10歳未満の年代に広がったことも感染拡大につながったと言えるでしょう。さらに、ワクチンや自然感染によって獲得された免疫を回避するような変異株であったこともあり、感染拡大に向かう全ての条件がまさにそろったことが、過去最大の第6波を生んだと言っていいでしょう。
 その中で、新型コロナの発生から3年目を迎え、私たちはこの先どうしていったらいいのかということが大きな悩みだったと思うのです。そして出された答えが、重症化リスクが低いといったことを拠り所として、できる限り社会経済活動を回しながら、新型コロナと関わっていかなければならない時期に来ているということが、国をはじめとする行政の共通する認識だと思うのです。今年(21年)のゴールデンウイークは、3年ぶりに国や道から行動自粛要請がなされませんでした。札幌ではさっぽろライラックまつりも開催され、今後、YOSAKOIソーラン祭り、さっぽろ大通ビアガーデン、野外フェスなどの大規模イベントが開催される予定にあるのも、そういった認識に基づくのでしょう。
 しかしながら、新しい変異株に置き換わっても、感染経路が変わるわけではありません。当然のことながら、飛沫感染対策としてのマスクの着用、接触感染対策としての手洗い、さらには今よく言われているエアロゾル感染、マイクロ飛沫感染とも言われていますが、3密空間(密閉・密集・密接の3つの密)では、いわゆる1~2mよりも遠い距離でも感染するということが分かってきていますので、やはり3密空間における高い感染リスクを抑えるためにも、3密回避と十分な換気といったことの基本は守り続けなければならないということです。
 国の新型コロナ対策として、今年(22年)の6月1日から、屋外で周囲との距離が必ずしも十分確保できない場合でも、徒歩通勤など会話をほとんど行わない状況であればマスクの着用は必要ない、あるいは屋内でも2m以上離れていて会話がなければマスクは着けなくてもいいとの考えが示されました。そのことについて、実は以前からも言われていることなのですが、日本国内におけるコンセンサス(共通認識)として、一定の条件が満たされるのであればマスクは外してもいいということを、しっかりとメッセージとして出しておくことは必要だと思います。特に小さなお子さんの場合には、マスクの弊害というものもありますし、大人でも熱中症の問題など、そういったことを回避するためにも、熱くなる夏を迎えるこの時期であるからこそ、正しく受け止める必要があると思っています。
 その一方で、このメッセージが過剰に捉えられてしまい、「マスクは外していいんだ」という部分だけが切り取られて伝わってしまう可能性は考えられますので、十分注意しておく必要はあるでしょうし、丁寧に伝えていく必要があると思います。

慢性的疲労感から学習・記憶障害やブレインフォグなど、社会的問題にもなりつつある後遺症

 最近は、新型コロナ感染症の急性期の症状はもちろんですが、療養期間を終えたとしても、後遺症に悩まされている人が少なくないという問題が取り沙汰されています。以前は、治った後も続く咳や嗅覚・味覚の障害がよく言われていましたが、慢性的な疲労感など、客観的には判断しにくいような、長期にわたるさまざまな症状で苦しんでいる人が目立ってきています。一方で、オミクロン株に関しては、出現してまだ半年も経っていないため、これら後遺症と呼ばれる症状が、どの程度出現し、どのくらい続くのか、まだまだ分からないわけです。
 従来の変異株による新型コロナが治った後に、長く続く咳や倦怠感など、中期的な後遺症があるとことのほかに、長期にわたる学習障害や記憶障害といったものも見られたり、「ブレインフォグ」と呼ばれ、脳に霧がかかったような、何かスッキリしない感じが続くことによって、社会活動がうまく送れない状態にあるという人が少なからずいることは確かで、専門家の中には、脳の萎縮が起きているのではないかと、脳に後遺症が残る可能性について示している人もいます。
 後遺症について、その全体像を把握するための詳細な情報が必要となるわけですが、現状においては、対応はまだ個人の開業医に頼っているところが大きいと思います。ですから後遺症に関するデータも集まりにくい状況にあるのではないでしょうか。やはり規模の大きい医療機関で後遺症を専門に診る外来を設けて、そこで多くの症例を集め、情報を共有することで、患者さんの共通点を見出し、問題点を洗い出すことができれば、治療法、おそらくは対症療法ということになるとは思いますが、導き出せるのではないかと思います。
 現時点では、後遺症に対する確立した治療法はありません。それぞれの症状に対する、対症療法が手探りで試されている現状です。その効果については、はっきりとしたことは言えません。その意味でも、オミクロン株は重症化しにくいから感染しても大丈夫ということにはなっていないということを、認識しておく必要はあるでしょう。

検査の目的は、感染者を拾い上げ封じ込めることから、有症状者を医療につなげる確定診断へ

 検査では、最初は喉のぬぐい液を検体としていたのですが、その後、インフルエンザの検査で行う鼻咽頭(鼻の奥)のぬぐい液、さらにだ液が良いとされ、現在では鼻の浅い所で採取する鼻腔ぬぐい液も使われるようになっています。鼻咽頭からきちんと検体を採取するためには医療従事者による採取が必要ですが、くしゃみや咳が出やすく、採取者の感染リスクが高かったり、検査を受ける側のストレスも大きいのが欠点です。鼻腔では、鼻に入れる綿棒も短く、患者さんが自分で採取できるという大きなメリットがあり、ストレスが少ないと思います。町中に検査センターができたり、検体を郵送して検査結果を知れるようになったのは、検体を採取する方法の変化も要因として大きいと思います。
 ただ、検査に関しては、まだ問題が残されているのです。検査方法には、ウイルスの遺伝子を調べるPCR検査と、ウイルスタンパク質を調べる抗原検査があります。抗原検査には、機械を使ってタンパク質を検出する抗原定量検査と、機械を使わずに簡便なキットで陽性か陰性かだけを判定する抗原定性検査があり、今、薬局などで市販されている迅速診断キットと言われているものです。この抗原定性検査が十分な感度があるとは言えないのです。特に無症状の場合の感度はさらに低いため、この検査で陰性だから安心だとは絶対ならないのです。症状がある場合には検出感度も十分に期待できるとして厚生労働省が推奨していますが、無症状者については推奨されてはいないのです。しかし、実社会では販売され使われているというのが、私には矛盾するように思えるのですが、現実なのです。
 いわゆる市中感染が広がる原因の一つとして、抗原定性検査で陰性だったからと安心して、十分な感染対策を怠って、社会活動を行ってしまっている人が感染源となることはあり得ると思うのです。私としては、むしろ無症状の人は、感度の低い方法で検査するくらいならば、あえて検査は必要がないと思っています。基本的に、検査で陰性だからといって、私たちが取るべき感染対策行動が変わるわけではないのです。陰性だからといって、人にうつさないのだから感染対策をしなくていいとはならないわけです。むしろ感染対策行動を変えないためにも無症状者における迅速診断キットでの陽性や陰性の結果は、かえって余計な情報になるのではないかと思うのです。濃厚接触者は別ですが、無症状の人が検査に頼る必要があるのかについて、私は疑問に思っています。
 新型コロナの発生当初や、あるいは感染者が急激に拡大しつつあるときには、無症状の人を含め、とにかく数多く検査をして感染者を拾い上げて封じ込めるという考え方は理にかなっていたと思います。しかし、新型コロナがまん延していると言っていい今の時期はどうでしょうか?世間的にはとりあえず検査ありきという考え方がまだまだ強いようですが、検査のリソース(資源)にも限界があることも考えると、私としては、検査は感染者を網羅的に拾い上げるためのものではなく、症状のある人たちの中からコロナ治療が必要な人を医療的ケアに結び付けるかというところに集中して、そのための確定診断にこそ優先的に使うべきだと、そういう時期に来ているのではないか、変えていく必要があるのではないかと思っています。

ワクチンは感染予防から重症化予防へ。
3回目の意味は1回目と2回目を無駄にしないため

 ワクチンの効果については、日本でのアルファ株流行と同時期に、地域によっては流行したベータ株やガンマ株に対しては効果が低いのではという話は既に出ていましたし、新たに出現した変異株に対するワクチン開発も進められています。そもそも新たに出現する変異株にも対応できるワクチンが簡単に作れるというのが、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの一つの売りのはずなのです。ただ、その開発スピードを上回るスピードで次々と変異株が出現している現状であると私は捉えています。
 そして、オミクロン株については、その前のデルタ株より、さらにワクチン免疫を回避するという特性が強く、感染予防効果はかなり厳しい状況にきているのは事実のようです。一方で、重症化予防効果に関してはまだまだあるということは分かってきており、その意味ではワクチンの価値がなくなったということでは決してないと言えるでしょう。ただ、オミクロン下では以前のように、ワクチンを皆が接種することによって新型コロナに感染しない、あるいは感染させないといった集団免疫効果はあまり期待できないと言っていいと思います。その点でも、デルタ株とオミクロン株で様相がガラッと変わったと言え、ワクチン戦略の目的が、ここで大きく変革したと捉えてもらうと良いかもしれません。
 そして感染予防効果が大きくは期待できないということと、副反応のつらい経験と合わさることで、ワクチンの3回目接種に意味はあるのかという意見が20~30歳代という若い世代を中心に取り沙汰されていて、3回目接種は特に若年層ではあまり進んでいないという現状があります。
 若い人も3回目の接種をすべきかについては、正直、私自身も強い説得力を持って言い切れないのも事実です。ただ、若い人でも確率的には低いかもしれませんが、重症化する人がいるわけです。軽症と言いながら、かなりつらい症状が出る人もいます。やはり基礎疾患などをお持ちの人を中心に年齢を問わず、重症化予防、症状の軽減については十分期待できるということは知っておいてほしいのです。
 もう一つ言えることは、1回目と2回目を打たれた人は、新型コロナに対する免疫の記憶がしっかりついているのです。ただ、時間とともに免疫の記憶が薄れていくわけです。その記憶を呼び戻すのが、実は3回目接種の意味なのです。3回目を接種するということは、1回目と2回目の接種を無駄にしないという考え方もできます。ですから3回目を打たないで、1回目と2回目の記憶をすっかり忘れさせてしまうのはもったいない、ということも考えてほしいと思います。
 4回目接種に関しては、60歳以上と、18~59歳までの基礎疾患のある人を対象に、3回目接種から5カ月以上経った人から開始されることとなりました。これについては、既に海外ではいくつかの論文になっていて、中でもイスラエルのデータを見ると、確かに高齢者で3回目接種から4カ月目以降で4回目を打った当初の発症予防効果や、入院予防の効果は明らかにあることが分かっています。このような海外のエビデンスに基づけば、現在亡くなられている人のほとんどが70歳代以上であることを考えると、やはり高齢者に対しては4回目を打つ価値はあるだろうと思います。
 また、もう一つ意見の分かれる問題として、5~11歳の子どものワクチン接種のことがあると思います。私としては、接種についてはよく考えていただいて、今はまだ待ちたいという判断は、尊重したいと思っています。確かにある程度の効果はあると言われていますが、ワクチンに期待される感染予防効果という側面から考えると、かなり物足りないというのが私の今の認識です。重症化予防を考えると、基礎疾患を持つお子さんへの接種はメリットがあるでしょう。また、重症化リスクの高い高齢者、あるいは兄弟姉妹が何らかの先天性の基礎疾患を持っていて同居している場合には、ワクチン接種を考えるのが良いのではないかと思います。
 ワクチンに関しては、ノババックス社の新しいタイプの遺伝子組み換えタンパクワクチンが今年(22年)4月19日に承認されました。このワクチンは副反応が低いことが期待でき、日本国内で生産できるので、大きなメリットを持つ可能性があると思っています。今後の展開に期待しています。このほか、塩野義製薬でも遺伝子組み換えタンパクワクチンの治験を行っており、承認申請に向けて協議が進められているようです。
(※5月30日にジョンソン・エンド・ジョンソン社のウイルスベクターワクチンが承認されたが、現時点で公費による無料接種には含まれないとのこと)

条件付きだが、軽症者に使える薬が増えたことは大きな進歩。
誰でも使える薬になることに期待

 治療法はかなり確立されてきています。重症度によって異なり、リスクの低い軽症者の場合は解熱剤の使用など、対症療法を行いながら経過観察すれば、多くが自然に軽快しています。中等症では酸素療法や、重症者には人工呼吸器やECMO(エクモ=体外式膜式人工肺)が使用されることになります。
 ただし、現在では当初とは違って、抗ウイルス薬が登場し、その数も増えてきています。1つは、以前は中等症以降でなければ使えなかった点滴の抗ウイルス薬のレムデシビル(ベクルリー)が軽症から使えるようになりました。また、高齢者や基礎疾患のある、重症化リスクの高い人に対して、発症から5日以内に使う経口抗ウイルス薬としてモルヌビラビル(ラゲブリオ)と、ニルマトレルビルとリトナビルの合剤(パキロビッド)の2つ、さらに、発症から7日以内で点滴もしくは皮下注射で使うカシリビマブとイムデビマブの合剤(ロナプリーブ)と、点滴のソトロビマブ(ゼビュディ)の2つの中和抗体薬があります。
 しかし、発症初期でないと使えない、さらには重症化リスクのない感染者は投与の対象になっていません。ラゲブリオは、動物実験の結果から、胎児に影響が出る(催奇形性)が否定できないことから妊婦禁忌になっています。パキロビッドに関しては、薬の飲み合わせが難しく、高血圧や高脂血症などを含む治療薬の中に、併用禁忌や注意の薬が約40種類あるという欠点があるのです。治療効果は後者の方が高いようです。この現状を考えると、私たちが求める、使い勝手が良い、気軽に治療薬にはまだまだなっていないと言えるでしょう。
 その意味では、塩野義製薬が緊急承認の申請を行っている治療薬には期待しています。これまでの薬は、重症化リスクのある人に対して、重症化しないということを指標とした治験が行われています。一方で、塩野義製薬の新薬では重症化リスクのある人に限ったものではなく、ウイルスの量の減少と、風邪様の症状が早く治まるかどうかを指標に、治験を行っているようです。これが承認されれば、重症化リスクの有無にかかわらず、誰でも使えるような薬に一歩近づくと思っています。

個々人の感染対策の上にこそ自由な生活が成立することを忘れなければ急激な感染拡大は防げる

 新型コロナ発生から3年目の今年(22年)は、オミクロン株の出現によって、パラダイムシフトと言っていいくらい、私たちの対応も変わりました。まさに「ウィズコロナ」の時代になったわけです。さらに、BA・1、BA・2、今またBA・4やBA・5、BA・2・12・1というオミクロンの派生株も見つかっています。こうした早い発見は、ゲノム解析の進歩によるところが大きく、新しいタイプが出現する度に話題となりますが、それが実際に問題になるかは別の話です。ただ、BA・4とBA・5は南アフリカで従来のオミクロンから置き換わって再増加していますので、やはり警戒はするべきだと思います。
 北海道では、今年(22年)の1月27日から開始されていたまん延防止等重点措置が3月21日に解除され、一度、感染拡大の波は終わったと思われました。しかし、その波が終わり切らないうちに、また波が上がってきて、それ以降、高止まり傾向が続いていました。医療機関や高齢者関連施設、あるいは学校や乳幼児施設では小規模ではあるもののクラスターの継続的な発生も絶えません。幸いなことにゴールデンウイークの感染拡大への影響は思ったより極めて少なかったようですが、まだまだ感染の波は起きうるのです。しかし、上がった波が下がらないということは、おそらくないでしょう。そして徐々にでも明らかに収束の方向に向かっていくとは思います。
 第1波から第6波までがそうだったように、新しい変異株が生まれ、国内に入って来たときには大きな波が起きるわけです。社会経済活動が少しずつ3年前に戻りつつあり、海外からの入国者数の上限も引き上げられ、観光客の受け入れも緩和され、より人の流れが活発化する方向にあるわけですから、現時点でも決して予断を許さないことも現実です。
 これまでの経緯から、第4波や第5波のときも、また次の波は起こるだろうと思っていました。ただし、きちんと感染対策を行っていればそれらの波も乗り切れるだろう、波もどんどん小さくなっていくだろうと多少は楽観的なスタンスであったのですが、そういった考えをものの見事に崩していったのがオミクロン株です。今までとは比べものにならないスピードで、あっと言う間に広がりました。しかも、感染しても軽症で済む人が多いからと思っていたら、後遺症の問題は出てくる、死亡者の数は、実は第6波が最も多くなっているわけです。
 私たち個々人のレベルで行うことは今までと変わりません。さらに今は、自分の身を守る術としてワクチンもあります。ただ、ワクチンに関しては、やはり抵抗感を持っている人も多くいるのも事実です。最近、私は接種についての意見を求められたとき、積極的に接種すべきですと、やみくもに勧めることを控えています。なぜなら、打つ意思のある人は何も言われなくても打つのです。今必要なのは、打つのをためらっている、あるいは打ちたくないという人に対して、どういうメッセージを向けるかということなのです。まずは打たない理由に対して、一定の理解を示さない限り、ただ打ってくださいと言うだけでは、その方向には決して向かわないと思います。その人の考えを理解したうえで、打つことのメリットについて正しく丁寧に伝えていくしかないと思うのです。
 いずれにしても、今年(22年)の夏は昨年(21年)の夏とは異なり、社会経済活動も活発化する方向に進みます。繰り返しますが、その中で私たち個々が取るべき行動は、しっかりと感染対策は行うということです。マスクの着用、手指洗いの徹底、人と人との距離をしっかり確保する、3密空間(密閉・密集・密接の3つの密)を回避し、換気を徹底する。これらは最初から変わらないことです。
 日々の生活や娯楽も含め、社会を動かしていくうえでは、動くことと引き換えに、むしろ感染対策はさらにしっかりと行っていく必要があるだろうと思っています。個々人の感染対策の上にこそ自由な生活が成り立っているということを忘れさえしなければ、それほどまでに急激な感染の拡大ということはないだろうと思っています。

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